俳句 高木朱星選

本の黴(かび)昭和の匂ひ残しをり 出 雲 丹後 漁舟

 【評】大切に持っておられるご本であろう、年号も昭和64、平成31、令和3年と3代を経過し、蔵書も黴びてくるのもいたしかたない。それでも捨てることができないのが人情である。

見回りの青田に出合ふこうのとり  雲 南 高島 暁星

 【評】水稲栽培の農業をされているのであろう。校庭の巣塔に育ったコウノトリに青田で出合われた。青田は苗が伸びて水が稲に隠される状態のこと。日々の生活の中での写生の一句。

睡蓮やヘルン好みし北の庭     松...