男子マラソン ゴールに向かう大迫傑。6位入賞を果たした=札幌市
男子マラソン ゴールに向かう大迫傑。6位入賞を果たした=札幌市

 男子マラソンは世界記録保持者のキプチョゲ(ケニア)が終盤独走し2時間8分38秒で2連覇した。今大会での現役引退を表明して臨んだ30歳の大迫傑(ナイキ)は2時間10分41秒の6位で、日本勢2大会ぶりの入賞。

 ナゲーエ(オランダ)が1分20秒遅れの2位、アブディ(ベルギー)が3位に入った。中村匠吾(富士通)は2時間22分23秒で62位、服部勇馬(トヨタ自動車)は2時間30分8秒で73位に終わった。

 6番手でゴール前の直線に入った。「これが最後だ」。大迫は右手、左手を上げて応援に応えながら、現役最後と決めたレースを走り抜けた。男子マラソン6位。コースへ向き直り、歩みを思い返すようにじっと見つめた。

 30キロすぎでキプチョゲがペースを上げレースが動き、2位集団からも遅れた。8番手から諦めることなく脚を動かし、36キロ手前で2人をかわす。前に見える4人の2位集団とは15~20秒差。「100パーセントを出し切りたいという思いで、結果的に追いつけたらと」。しかし余力はなく、表彰台は争えなかった。

 「チャンスがあれば」とメダルを目指した。しかし集団から離れた際は「下手に3番以内を狙うと大きな崩れがある」と自重。機をうかがった最終盤は、足がつりかけるなど体が限界だった。「百点満点の頑張りはできた。やり切った」。理想を追いながら、現実も直視しての入賞だった。

 独自の道を進んできた。「背伸びしないといけないチーム」を求め、早大時代から米国の強豪入りを熱望。日本の実業団を1年でやめて米国を拠点にした。五輪出場権のために出た昨年3月の東京マラソン前と、今年1月から3月はケニアで合宿。前例にとらわれない挑戦で日本屈指の力をつけた過程に誇りを持つ。

 近くで見てきた五味宏生トレーナーが「ケニア選手と遜色ない」という広いストライドは強い探究心と圧倒的な練習量が土台。一緒に練習した日本選手が「次元が違う」というメニューで自らを追い込んできた。

 3位との41秒差を「あと一歩」と表現し、涙ながらにメダルの夢を後進に託した。「『次は自分だ』と思っていると思う。そのことが最後の役割として陸上界に残せたもの」。開拓者の自負を言葉ににじませた。