新型コロナウイルスに感染したと国に報告があり、自宅で亡くなったのは、今年1~6月の半年間に全国で84人に上ることが9日、厚生労働省の集計で分かった。報告から数日しかたっていないケースが目立ち、容体が急変したとみられる。感染「第5波」で病床が逼迫(ひっぱく)する中、政府は入院対象を重症者や中等症で重症化リスクがある人らに限定する方針に転換。今後も自宅療養中の死亡増加が懸念され、異変を察知し、医療につなぐ態勢づくりが課題だ。
全国の自宅療養者は4日時点で4万5千人を超え、1週間で約2万6千人増えた。感染力が強いインド由来のデルタ株の影響により、増加ペースは急拡大している。
厚労省は医療機関や保健所が入力した感染者情報を国や自治体が共有するシステムを使い、1~6月の報告分を調べた。
死亡場所が「自宅」だったのは84人。年代別内訳は80代以上(36人)、70代(24人)、60代(11人)が全体の8割以上を占めた。50代は7人、40代1人、30代3人、20代1人、不詳1人だった。
報告から死亡までの日数は「1~9日」が36人で最も多く、「10~19日」は11人、「20日以上」は4人で、最長は30日だった。この他に報告と死亡が同じ日か、報告時点で既に亡くなっていた人が計9人、死亡日不明が24人だった。
亡くなった人の当初の症状は不明だが、軽症で入院が必要ないとされたり、感染者が増えて病床が埋まり、入院調整中だったりしたとみられる。
政府は今月2日、感染が急拡大している地域での入院対象を「重症者や重症化リスクがある人」に限定し、それ以外は自宅療養を基本とする方針を打ち出した。
だが与野党からの反発を受け、わずか3日後に「中等症でもリスクの高い人は入院対象」と説明を修正。入院制限は「あくまで自治体による選択肢の一つ」とした。
軽症でも自宅で容体が急変し、死亡する事例が起きているため、政府は療養中の健康観察を強化。患者の血中酸素濃度を測るパルスオキシメーターの配布や、往診する医師の診療報酬を手厚くするほか、医療機関に空きベッドを確保しておくなどの対策を進めている。