短歌 寺井淳選

声ひくく石童丸の和讃きく春まだとほき清水寺に         松 江 松岡 治恵

 【評】苅萱(かるかや)道心と石童丸の父恋いの物語。信仰と肉親の情の相克を、昔から人々は説経として心に刻んできました。四句目は、大切なものを遠くに望む心を表しています。

冬晴れの日差しを静かに取り込んでほほ笑む人の目の奥の春    米 子 山本ひとみ

 【評】冒頭の冬の空と太陽から、末尾の目の奥の春へ、確かな季節の推移を滑らかな調べに乗せて申し分なく表現しています。現実のこの冬は厳しかったですね。

ひらめ...