東京パラリンピックの全会場で、一般観客を入れないことになった。「観戦できれば格別だったはず」。席を確保していた選手の家族や関係者には無念の思いがにじむ。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中ではやむを得ないとの受け止めも聞かれた。

 

 「コロナがなければ良かったのに」。ともに視覚に障害がある柔道男子90キロ級の広瀬悠(42)、女子57キロ級の妻順子(30)を会場で応援しようと、松山市に住む悠の父郁雄さん(68)はチケットを購入していた。

 悠が出場した2008年の北京大会は現地で観戦。「会場はお祭り騒ぎで、国籍を超えた観客の一体感があった。実際に見るのは格別だった」と振り返る。

 「東京でも愛媛でも感染者が多くなっている。自分が感染したら周りの人に迷惑を掛けることになる」と不安も口にする。「2人ともメダルを取ってほしい」。遠く離れた松山から活躍を祈る。

 競泳女子(知的障害)の福井香澄(22)、井上舞美(22)が暮らす滋賀県で、2人を指導してきた青谷大地さん(36)は「一緒に戦ってきた仲間なので会場で観戦できれば良かったが、選手がパラリンピックの場で泳がせてもらうことが一番大事。この感染状況では一般観客なしでも仕方ない」と話した。