ゆったりとした歌の良さを思うこのごろ。

 田村元「昼の月」(いりの舎)には、短歌が生来持つ、おおらかなリズムに言葉を委ねる愉(たの)しさがある。〈辛口の「谷川岳」を北に置きわがテーブルは関東平野〉〈酔ふほどに言葉はわれを離りゆきそのあとは妻に語らせてゐる〉など、声に出してみればさらに言葉と音の「うねり」が心地よく感じられるだろう。

 妻と酒を愛する四十前...