2012年2月のある日、順天堂大教授(心臓血管外科)の天野篤(65)は東京大病院で心臓の冠動脈造影検査の画像に目を凝らした。天皇陛下(現在の上皇さま)のカルテだった。

 傍らの宮内庁皇室医務主管の金沢一郎(故人)と主治医で東大教授(循環器内科)の永井良三(72)=現医務主管=は天野の顔色をうかがう。永井らは「検査結果を見に来てほしい」と天野を呼んでいた。

 冠動脈は心臓を取り巻くように大きく3本に枝分かれした血管。心臓を動かす筋肉に酸...