ゲームの腕前を競うeスポーツにとって、熟練プレーヤーが一堂に会して全力でぶつかり合う「大会」は切っても切り離せない存在だ。プレーヤーは持てる技術全てを発揮して死闘を繰り広げ、観客は目の前で展開する白熱した戦いに熱狂する。「ゲーム」を「スポーツ」にまで押し上げるための重要な要素の一つだ。
記者が楽しむ音楽ゲームでも、メーカーのコナミアミューズメント(東京都)による公式大会が毎年開かれる。地方予選の会場に行ったことがあるが、僅差で競い合い、時に勝利の雄たけびを上げ時に悔し涙を流すプレーヤーたちの姿を見て胸が熱くなったのを覚えている。
今回は公式大会の概要や、出場プレーヤーの腕前について動画で説明する。
▼山陰でもeスポーツ大会
ゲームメーカーによる公式大会は都会で開かれることが多いが、近年は山陰でも有志によるeスポーツ大会が開かれるようになってきた。両県内の教育機関にeスポーツ部ができるなど、熱が高まりつつあることを受けての動きだろう。6月下旬には、鳥取県eスポーツ協会により、県日吉津村日吉津のイオンモール日吉津店で「第1回アイドルeスポーツ選手権」と銘打たれた大会が開かれた。
アイドルと言えば、華やかな舞台で歌やダンスを披露する印象が強い。画面に向かい黙々と作業を続けるゲームとは対照的な存在に思えるが、一体どんなイベントなのか。双方に高い関心を持つ記者が、現場に踏み込んだ。
ゲームは年齢、性別、場所、身体的ハンディキャップなどを問わず誰でも楽しめる点が魅力だ。大会は新型コロナウイルス感染対策のため、現地の観客の入場を制限し、インターネット上で生配信を行っていた。コロナ禍でライブの機会が減ったアイドルたちにとって、eスポーツはこれまでのファン、さらにゲームに関心を持つ新規のファンともつながれる絶好の場というわけだ。
今回のゲームタイトルは世界中で人気のオンライン射撃ゲーム「フォートナイト」。広大なステージを移動しながら銃などの武器を使い、自分のチーム以外のプレイヤーを全て倒せば勝利となる。記者は触ったことがないが、武器だけでなく足場や防御壁を作るための資材も集めながら生き残らなければならない、戦略性の高いゲームらしい。
ルールには各グループ選出の3人が1チームとなって戦う「トリオ」を採用し、アイドル同士の華やかながらも真剣な試合が始まった。大会の様子を動画で紹介する。
戦況を分析しながら「私が前に出る」「相手が近くまで来てるよ」などと仲間と指示を出し合い、倒されれば本気で悔しがる。笑顔のパフォーマンスが当たり前のライブでは見られない、表情豊かなアイドルの姿。ファンからすると貴重な機会だろう。
20分ほどの激闘の末、島根代表の3人組アイドル「Flood Lyrics」のメンバー、Zomが生き残り、優勝となった。勝利の瞬間、固唾(かたず)を飲んで見守っていたファンたちからは惜しみない拍手が贈られた。勝利後、Zomは「未経験だから役に立たないかと思っていたけど、勝ててうれしかった」と興奮気味に話した。
今回はコロナ禍での開催ということもあり、テナントを会場とした一発勝負だった。ただ、コロナ収束後にしっかりした会場で観客をたくさん入れ、参加アイドルも増やして開催すればさらに盛り上がる可能性を秘めていると感じた。
協会は今後、アイドルとファンが対戦できる大会や交流会を考えているという。これからはゲームがアイドルとの新たな交流の手段になりそうだ。

◯参加アイドルグループ
今回は、島根、鳥取両県と北海道からアイドル3グループが参加した。
・Flood Lyrics(フラッドリリックス)

プロゲーマーのUlt(ウルト、左)、地方番組でナレーターを務めるZom(ゾン、中央)、農家出身のTen(テン)の個性豊かな3人組で、島根県のPR大使「遣島使」のほか、JAしまねの初公式アンバサダーにも任命されている人気グループ。
・jubilee jubilee(ジュビリージュビリー)

あいか(左)とうめかの2人組アイドル。過去にはアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」の放送中に流れる、鳥取県の観光CMに起用されたこともある地元密着のグループで知られる。今回は島根県eスポーツ連合とタッグを組む「モデルスタジオミューズ」(松江市上乃木4丁目)所属の小学生モデル、心桜(こころ)さんチームにも加わった。
・「Teamくれれっ娘!」

北海道の8人グループで、今回はオンライン参戦。普段は札幌市の常設劇場で公演を重ねている。今大会に向け前日から会場入りしてゲームの練習合宿に取り組んでおり、ゲームに掛ける熱意がとても強い。