不思議な光景だった。気持ちが妙にザラついた。

 訪ねたのは山口県宇部市の床波海岸。波打ち際に立って沖合に目をやると、視界に飛び込んでくるのは海面から突き出た2本の太い円筒だ。地元の人たちは、これをピーヤと呼んでいる。

 かつて、この海の底に炭鉱があった。1914年に開坑し、終戦ごろまでに閉山した長生炭鉱である。ピーヤは換気を目的に設けられ...