『第38回東京国際映画祭』クロージングセレモニーに登壇した(左から)福地桃子、河瀬直美 (C)ORICON NewS inc.
『第38回東京国際映画祭』クロージングセレモニーに登壇した(左から)福地桃子、河瀬直美 (C)ORICON NewS inc.

 『第38回東京国際映画祭』(TIFF)のクロージングセレモニーが5日、都内で開催された。

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 最優秀女優賞は『恒星の向こう側』の福地桃子(28)と河瀬直美(56/※瀬=旧字体)が受賞した。同作は、母の余命を知り故郷に戻った娘・未知(福地)は、寄り添おうとしながらも拒絶する母・可那子(河瀬)と衝突を重ねる。夫・登志蔵(寛一郎)との間に子を宿しながらも、亡き親友への想いに揺れる彼の姿に不安を募らせる未知。母の遺したテープから“もうひとつの愛”を知ったとき、彼女は初めて母を理解し、母から託された愛を胸に進んでいく。

 父に俳優・哀川翔を持つ福地は壇上でトロフィーを受け取ると笑顔。スピーチで福地は「この度はこの歴史ある素敵な賞をいただけて、本当に光栄に思います。まずは自分が生まれ育った故郷での映画祭で『恒星の向こう側』という大切な作品を通して映画に携わった一人として、こうしてお話をさせていただけることが身を引き締まる思いではありますがでもうれしく思っています」と心境を語った。「映画が撮影されていたのはちょうど1年前のこの季節で。主人公の未知という人物を見つめて、追いかけて、解け合っていくような時間は決して一人では乗り越えられる世界ではありませんでした。ますはこの物語を生み出して、未知を見つめ続けて一緒に歩んでくださった中川龍太郎監督、そして本当に大変の撮影の中で理解を深めて、撮影をする環境を徹底して作ってくださったチームの一人一人の皆さん、あとは今回同じ作品から受賞することができた母である河瀬直美さん」とキャストの名前を列挙して感謝していた。途中、感極まりそうになり、河瀬が優しく背中をさすった。「撮影から編集、そして完成まで共に同じ時間を味合うことがまず素晴らしいことだなと感じていて、皆さんに大変感謝しています。この先自分が、どんな風に年を重ねて、どんな役者さんになっていくのかなっていうのはわからないことがたくさんあるんですが、この経験を胸に一つひとつの作品に真っすぐ向き合ってまいりたいと思います。本日はありがとうございます」と決意を新たにしていた。

 映画監督でもある河瀬は「監督として映画祭に参加したことがあっても、俳優としてこのような場に立たしていただけたことは、ひとえに中川龍太郎監督がこのような場を設けてくれたことにつけると思っています。もちろんスタッフのみんな、そして共演の皆さん、そういう人たちがいてこそ、私自身がその場で本当に自分自身のすべてを出し切れなんだなというふうに思っています」と感謝の思いを口にした。「大変難しい役柄でした」とする。「現場中は娘役の福地桃子さんにはカットが掛かっても冷たい態度をずっととっていて、始まる前、衣装合わせの時からあまり話さないという徹底した役積みをやっておりまして。嫌われたかなと思いながらも、最後の最後に彼女の重さとそして温かさをこの背中に背負った瞬間に、自然と涙があふれました。人はきっとそうしてつながって、その温かみを自分自身のものとして感じられた時に生きていてよかったなっていう風に思える。そういう生き物なんだと思っています」と話していた。

 TIFFは世界から監督や俳優、映画関係者などが集まるアジア最大級の国際映画祭。今年は先月27日から今日5日まで10日間の開催で、上映本数は184本だった。

■コンペティション部門の受賞一覧
東京グランプリ/東京都知事賞:『パレスチナ36』
審査委員特別賞:『私たちは森の果実』
最優秀監督賞:アレッシオ・リゴ・デ・リーギ監督/マッテオ・ゾッピス(『裏か表か?』)、チャン・リュル監督(『春の木』)
最優秀女優賞:福地桃子/河瀬直美(『恒星の向こう側』)
最優秀男優賞:ワン・チュアンジュン(『春の木』)
最優秀芸術貢献賞:『マザー』
観客賞:『金髪』