「知の巨人」とも称される彼の膨大で異形の業績に触れることで、博識の楽しさを体験できる。人の可能性が感じられる。でも、彼に対しては、一つの問いが最後まで残る。「何をなしたのか」
和歌山県田辺市の南方熊楠顕彰館には最晩年を過ごした家がある。平屋建ての書斎の縁側近くに座って研究に没頭した。学者然とせず、奇行もあった、市井の博物学者だった。その人生とは-。
南方熊楠は1867年、和歌山城下に生まれた。明治の前年だ。本草学に興味を持ち友人宅にあった「本草綱目」「大和本草」「和漢三才図会」などを借りて書写した。
中学に入ると博物学、英語などを学び、13歳には和漢...











