【短歌】 宮里 勝子選

空見上げ「雨が降るといいのにね」野菜の声が聞こえてくる朝   大 田 坂本 恵子

 【評】例年になく早い梅雨明けから約2カ月、雨らしい雨が降らなかった。少々の水やりでは追いつかない暑さに野菜の苗はお手上げ、雨を待っているのは人間だけではないことを優しく問いかけられている。

トマト摘(つ)む日焼けし父の一日をのみ込むごとく丸かぶりする    浜 田 沖田 邦子

 【評】お父様が丹精込めて作られたトマトを目の前にして、感謝と喜びを表す一首。一日をのみ込むという大胆な表現の中に奥行きと省略があり、作者の気持...