田中聡史さん(56)は2000年、東京都立養護学校教員(現・特別支援学校)の図工・美術科で採用された。当時31歳。それ以前は会社員だった。

 現在まで教員として美術を教えているが、実はその間に懲戒処分を合計12回も受けている。理由はいずれも同じ。入学式や卒業式の際、国旗掲揚・国歌斉唱時に起立せず、座っていたためだ。

 「日の丸・君が代」を巡っては、東京都教育委員会が「起立斉唱」を求め、従わない教職員たちを処分し続けている。その数、481件。納得がいかない教職員側は裁判などで争ったが、その結果、教員人生の大半を「被処分者」として過ごすことになった。

 そこまでして不起立を貫く理由は何なのか。それ以前に、今の時代、組織にいながら自分の信念を曲げない生き方なんて、できるものなのか。田中さんは穏やかで、決して激しく闘争するような人には見えない。話を聞く...