「第42回サンダンス映画祭」でワールドプレミアを飾った映画『炎上』(4月10日公開)の長久允監督、主演の森七菜
「第42回サンダンス映画祭」でワールドプレミアを飾った映画『炎上』(4月10日公開)の長久允監督、主演の森七菜

 俳優の森七菜が主演を務める映画『炎上』(脚本・監督:長久允)が現地時間25日、米パークシティーで開催中の「第42回サンダンス映画祭」(1月22日~2月1日)にてワールドプレミア上映され、森と長久監督が舞台あいさつに登壇した。

【画像】「第42回サンダンス映画祭」に参加した森七菜

 サンダンス映画祭は、クエンティン・タランティーノやジム・ジャームッシュ、ポール・トーマス・アンダーソン、デイミアン・チャゼルらを輩出してきた、世界最大級のインディペンデント映画祭。40年以上にわたり、独立系映画の登竜門として高い評価を受けてきた。

 長久監督はこれまで3度にわたりサンダンス映画祭で受賞歴を持つ。2017年の短編映画『そうして私たちはプールに金魚を、』でショートフィルム部門グランプリを日本映画として初受賞。19年には長編デビュー作『WE ARE LITTLE ZOMBIES』で審査員特別賞(オリジナリティ賞)を獲得し、さらに24年公開の短編映画『蟹から生まれたピスコの恋』で短編映画特別監督賞を受賞している。今回『炎上』は、挑戦的で革新的な作品が選出されるNEXT部門にノミネートされた。

 過去の受賞歴から注目度は高く、上映回のチケットは完売。満席の会場には期待と興奮が渦巻く中、上映終了直後には大きな拍手と歓声が響き渡り、森と長久監督は熱烈な歓迎を受けた。

 ワールドプレミアを前に、森は「緊張とワクワクが入り混じっていて…海外で自分の出演作品を観るのは初めてなので、人生の中で大切な思い出になっていくんだろうなと楽しみです。熱気のある場所に来られてすごくワクワクします」と心境を語っていた。

 舞台あいさつでは、緊張した面持ちながらも英語で「Thank you for watching our film, and I’m looking forward to hearing your thoughts.Thank you!(映画を観てくれてありがとうございます。感想を聞くのを楽しみにしてます!)」と観客に感謝を伝え、会場を沸かせた。

 本作は、両親に厳しく育てられ、自身の感情をうまく表現することができずに生きてきた樹里恵(森)の物語。ある日、家族との関係に耐えきれなくなった彼女は、衝動的に家を飛び出してしまう。SNSを頼りにたどり着いた先は、新宿・歌舞伎町。これまで知らなかった世界で、さまざまな人々と出会い、自分の意思を持つことができるようになった樹里恵にとって、そこは初めて“安心できる居場所”となったかに思えた。しかし――。

 それぞれに生きづらさや傷を抱えた者たちが寄り添い、集う街・新宿歌舞伎町。そこに身を置いた樹里恵は、人々との出会いを通して何を得て、何を選び取っていくのか。現代を生きる若者のリアルと、居場所を求める心の行方を描き出していく。

 長久監督は「本当にこの映画はすごくつくるのが難しくて…だから、こうしてこの映画をみなさんに見ていただけて、とてもうれしいです」と語り、4度目となるサンダンス映画祭への参加に喜びをにじませた。さらに、新宿で生きるストリートキッズへの5年にわたるリサーチを重ねてきたことを明かし、「彼らのバックグランドや過酷なシチュエーションをたくさん知りました。彼らは、本当に痛みを抱えていたし、優しさを抱えていたし、強く生きたいと思っていた。だから僕はこの映画をつくらないといけないと思った」と制作への思いを語った。

 長久監督は最後に、「例えば、あなたが東京を訪れて、きらきらしたネオンサインを見た時、歓楽街の裏側に彼女たちがいることを想像してもらえたら、この映画がある意味があると思います」と語り、森とともに拍手と歓声に包まれながら会場を後にした。

 上映後には、世界各国から集まった観客や批評家から高い評価が相次いだ。「すっごくよかった。観たもの全てをまだ消化しようとしていて、気持ちの整理がつかないです。いい意味で、言葉がありません」、「とても丁寧にリサーチされていたのが伝わってきます。“これが誰かの現実なんだ”という感覚に陥って、それを無駄なく見事に描いていたと思います」「ビジュアルがとても効果的でした。あるところではトランスのようで、あるところはざらついてて、夢のような世界に行ったり来たり。つらい映画ではありますが、それを狙っていたんだと思います。最後には全てが重なって、ニヒリズムの先にある深い意味が描かれている」と称賛が寄せられている。

 海外メディアからも、「大胆かつ感覚的で、ポップカルチャーの鮮烈さと骨太なリアリズムを融合させている。鮮やかな色彩と重苦しい影が絶妙なバランスで織りなす映像は、瀬戸際に立つ若者たちの感情の揺れ動きを際立たせた。鮮烈な美学を体現しながらも、作品の持つ骨太なニュアンスは決して失われていない」(Dinema Daily)、「強い印象を残し、観た後も簡単には忘れられない。それは偶然ではない。デジタル表現と現実の感覚を巧みに組み合わせることで、新しさと感情の強さを兼ね備え、見応えのある爽快な作品を作り上げている」(IndieWire)など、長久監督の作家性を高く評価するレビューが続出。森の演技についても、「大胆不敵な演技で物語を支えている。その演技は、彼女の脆さと、自らを貫く強い意志を見事に捉えている」(Dinema Daily)と賛辞が贈られた。

 本映画祭における受賞結果は1月30日(現地時間)に発表される予定。4度目のサンダンス挑戦となる長久監督と、主演・森七菜の最新作『炎上』がどのような評価を受けるのか、注目だ。

 映画『炎上』は、4月10日より全国公開される(配給:NAKACHIKA PICTURES)。