「バレンタイン=チョコレート」という定番の図式は変わりつつある。背景にあるのは原材料価格の高騰や消費スタイルの変化、そして“家で楽しむイベント”としてのバレンタイン再定義だ。近年は“大人のバレンタイン”で自分へのご褒美として高価格帯の商品を選ぶ人が増えている一方で、家族での“ファミチョコ文化”が広がり、ケーキなどみんなで分け合えるものを作って楽しむスタイルも増えている。バレンタインのスイーツ作りにどのような変化が起きているのか? 今年、『フィラデルフィア』からチーズケーキミックスを発売した森永乳業に話を聞いた。
【写真】『フィラデルフィア チーズケーキミックス』中身はどうなっている?
■チーズケーキの豊富なレシピ幅、"チョコらしさ"取り入れバレンタインに適応
“義理チョコ”文化は後退しつつある一方、子ども世代の“友チョコ”や親子で行うスイーツ作りの価値観は根強いものがある。バレンタインが休日と重なる年は特に手作りの機会が増えるといい、「レシピ検索の動きからも、休日に合わせて“作ってみよう”という動きが強まる傾向」と森永乳業・チーズ事業部森川奈緒美さんは分析する。
「大人のバレンタイン事情としては、今は自分向けのご褒美として買う傾向が増えているようですが、手作りにおいては、お子様が友達同士でスイーツを交換する“友チョコ”は毎年盛り上がり続けている印象です。平成ブームと呼応して、アルミカップで作る“平成女児チョコ”がリバイバルしたり、家族で楽しむ“ファミチョコ”のトレンドもあります。スイーツのなかでも、皆でシェアして食べられる“ケーキ”はSNSでも簡単に作れると話題で、レシピサイトでも検索数が増える傾向にあります」(森川さん)
「バスクチーズケーキ」に始まり、近年では解凍して食べる『Mr. CHEESECAKE(ミスターチーズケーキ)』、ヨーグルトとビスケットの材料だけで作るSNS発のレシピなど、トレンド感がおさえられ、挑戦しやすいとされるチーズケーキ。小分けにラッピングすれば1個で見栄えし、さらに一度に量を作りやすく、家族や友人とシェアしやすい。通常のお菓子作りでは分量の微調整や工程の多さ、温度管理や成形にも気を遣うが、チーズケーキは混ぜて焼くだけで完成するレシピも多いという。
「誰でも簡単に作れて、失敗しにくい。一度にたくさん作ることができて、みんなでワイワイ食べられるのがチーズケーキの魅力です。レシピの幅が広く、チョコレートの価格が上がっているなかでも、チーズケーキをベースに一部チョコを使用すれば、バレンタインらしさが備わったチョコチーズケーキを作ることができます」
忙しいなかでも「お菓子作りを通して親子の時間を持ちたい」「家族のためのバレンタインディナーを作りたい」など、コスパ・タイパ意識と満足感との両立が、生活者にとって現実的な選択肢となっているのかもしれない。
■「作る体験」自体に価値、 親子で一緒に作る時間そのものが家族イベントに
市場データからも、チーズケーキの需要は裏付けされている。『フィラデルフィア』のクリームチーズを販売する同社によると、チーズケーキの材料であるクリームチーズの売上は、一年の中でも2月のバレンタインシーズンにピークを迎えるという。
「検索データを見ると『チーズケーキ レシピ』はクリスマスがある12月よりも、2月の方が伸びています。チーズ市場全体が前年比101%なのに対し、チーズケーキづくりに使われることの多いクリームチーズは108%と伸長しており、家庭でチーズケーキを作る需要が伸びていると推測しています(※)」(森川さん)
家庭で作る需要のなかでも、「作る体験」自体に価値を見いだす姿勢が顕著に出ているのではないかと森川さんは分析している。
「共働き世帯の増加で、平日は忙しい一方、休日は家族で過ごす時間を大切にしたい意識が広がっています。外食で豪華にするより、家で少し特別な食卓を囲むほうが選ばれるようにもなっています。親子で一緒に作る時間そのものが、イベントになっているんです。
自分が親と作った記憶があるから、子どもにも体験させたい。そんな“追体験”の声も増えています。作る工程と、分け合って食べる時間まで含めて価値を届けていく必要があるということですね」(森川さん)
※出典:インテージSRI+、24年1月-25年12月、クリーム(タブ・ブリック)市場 推計販売規模(金額)
■ 業務用チーズケーキの素、効率化の知見を家庭向けに応用
「簡単に作ることができる」「作る時間自体も価値にする」…こうした考え方を背景に、同社では卵と混ぜるだけでチーズケーキが作れる『フィラデルフィア チーズケーキミックス』を発売し商品設計を進化させている。
従来のチーズケーキ作りでネックだったのが、クリームチーズを常温に戻して柔らかくする工程。「寒い時期は特に硬く、時間がかかるため、そこでレシピを見るのをやめてしまう人も多い。そこを解消したかった」(川村さん)。
開発されたチーズケーキ用ミックスは、常温に戻す必要がなく、冷蔵庫から出してすぐに混ぜられる柔らかさがある。材料を混ぜて焼くだけでベイクドチーズケーキが出来上がり、焼きムラも出にくい配合に仕上げたという。
「弊社では業務用にチーズケーキの素を作って卸していました。その時に培った効率化の知見を家庭向けに応用しているので、初心者でも“簡単にできる”という成功体験を得られるようにしています。アレンジ性もあり、ベイクドチーズケーキはもちろん、ティラミス風やレアチーズ、チョコ入りミニケーキなど幅広く楽しめます。親子で役割分担しながら作れるのもポイントです」(川村さん)
かつてチョコレート一強だったバレンタインは、贈るためのイベントから、自分へのご褒美の価値観を経て、家で一緒に作って味わう体験型の行事へと幅を広げている。「その象徴的存在として、チーズケーキの存在感を高めていきたい」と川村さん。
「作る過程や一緒にシェアして食べる幸せな時間まで、まとめてご提供できればなと思っています。自分も親と作った記憶があるから、私もしてあげたいとか。追体験として、子どもと一緒にバレンタインのスイーツを作ることで、私もこんな青春あったなと思い出すのも、よい時間になると思います。そういう記憶は大人になっても残るものだと感じますので、『フィラデルフィア』を起点にその循環を生み出したいですね」
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