法制審の諮問と答申
法制審の諮問と答申

 上川陽子法相は16日、強制性交や強制わいせつ罪といった性犯罪の処罰範囲を拡大するかどうかや、インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷対策で「侮辱罪」に懲役刑を導入する刑法改正など3件の検討を法制審議会(会長・内田貴早稲田大特命教授)に諮問した。

 法制審は同日、性犯罪被害者の個人情報を加害者に知られないようにするため、住所や氏名を省いた起訴状を示せるようにする刑事訴訟法改正案の要綱を上川氏に答申した。

 性犯罪の処罰範囲に関しては、加害者からの暴行や脅迫があったことが強制性交罪などの成立要件としているのが最大の焦点。それらがなくても被害に遭う例が多く、被害者団体は「実態に合っていない」として性交の同意がなければ処罰の対象にするよう求めている。

 法制審に先立って5月まで議論した法務省の検討会では「処罰の範囲が不明確になり冤罪(えんざい)が生まれる」との反対意見もあり、結論がまとまらなかった。

 このほか法制審では(1)公訴時効の期間(2)性交に同意する能力があるとみなす「性交同意年齢」(3)地位や関係性を悪用した性行為の処罰―も論点となる。性的画像の撮影や他人に提供する罪の新設、夫婦間の強制性交罪の明文化も検討される。

 性犯罪規定を巡っては、2017年の刑法改正で強姦罪の名称は強制性交罪に変わり、法定刑の下限は懲役3年から5年に引き上げられた。

 侮辱罪は厳罰化し、拘留(30日未満)か科料(1万円未満)とする現行の法定刑に「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」が追加される方向。公訴時効も1年から3年になる。

 昨年5月に亡くなった女子プロレスラー木村花さん=当時(22)=に対し、会員制交流サイト(SNS)で中傷していた大阪府と福井県の男性2人が侮辱罪でそれぞれ科料9千円となったことに「刑罰が軽すぎる」と疑問の声が出ていた。法制審では「表現の自由」との関係や名誉毀損(きそん)罪とのバランスなどが話し合われる。

 三つ目の諮問は、家族関係などを示す公文書「戸籍」に記された氏名の漢字に、読み仮名を付ける検討。行政の事務処理を効率化させるのが狙いだ。