ベッドとイスだけが置かれた殺風景な部屋で、20代のベネズエラ人、ダニエラ=仮名=が語った。「客とこの部屋に来るのは嫌。セックスも嫌い。屈辱的だ」。ここは南米コロンビア北部の街、ククタにある売春バーの個室。ダニエラはここで、多い時には1日で10人近くの男性を相手にしている。その理由は、先天性心疾患を抱える長女や高齢の母親の生活を支えるためだ。

 ベネズエラは長年の経済危機で多くの国民が困窮。1月にはアメリカが軍事攻撃をし、マドゥロ大統領が連行された。ダニエラは大学院生で、祖国では幼稚園教諭でもある。そんな彼女が隣国で体を売る一因は、祖国の政治にあった。だが政権トップが国を去っても、翻弄され続けている。(敬称略、年齢は取材当時、共同通信ロサンゼルス支局長=井上浩志)

 ▽彼女との出会い

 私は、困窮するベネズエラ人女性の多くが国境の街であるク...