―「地域貢献・教育重視型大学」のスローガンに込められた狙いは。
学生が地域で学び、働き、その成果が大学に戻るという好循環の確立が将来像にあります。2025~30年度の中期計画では、入学者に占める島根県内出身者の割合55%、卒業生の県内就職率50%以上を目標に掲げました。県内就職を希望する学生に年額25万円を支給する「しまねの未来を担う人財奨学金」や「長期実践型キャリア教育(長期・事業創造型インターンシップ)」制度などを設け、県内企業のご寄付や地域の手厚いご支援をいただきながら目標に近づいています。

 

―新しいカリキュラムや入試制度を打ち出しました。
地域政策学部は26年4月に地域経済経営コースを「経済経営・デジタルマネジメントコース」(定員45人)に変更し、看護栄養学部と別科助産学専攻は25年度に4学期制を導入して夏と春の長期休暇で医療研修や海外留学に挑戦しやすい環境を整えました。人間文化学部では26年度入試で、県内で教員として働く意欲がある高校生を対象にした「地域教員希望枠」(定員8人)を設けました。いずれも教育や研究の成果を地域に還元するための取り組みです。

 

―企業や自治体との連携を積極的に進めていますね。
26年1月に出雲市とソフトウエア開発のイーグリッドと連携して遠隔医療の実証実験を始めたほか、萩・石見空港を利用して障がいのある方が旅行しやすい商品開発にも取り組んでいます。4月には、自治体や企業と連携した「石見地域文化国際ラボ推進室」を立ち上げます。県西部には石見神楽や石州和紙など固有の財産や文化が数多くあり、これらを題材に大学の知力を生かし、地域の活性化に貢献します。

 

―国際交流も広がっています。
25年度は中国寧夏回族自治区やタイ、インドネシア、ベトナムなどの大学と連携協定を交わしました。ITが盛んなエストニアなど欧州も視野に入れ、文化や言語にとどまらず、実践的な国際経済や国際ビジネスを学べる環境をつくりたいです。

 

 

私は大学で、地域や医療、看護の研究と教育に取り組んできました。学びを深め、知識や経験を重ねていくことは大切ですが、同時に「人とつながる力」も同じくらい重要だと感じています。どれほど時代が変わっても、人と人との信頼関係の上に社会は成り立っています。 若い皆さんには、失敗を恐れず、さまざまなことに挑戦してほしいと思います。すぐに結果が出なくても、その経験は必ず自分の力になります。そして、自分一人の成功だけでなく、周囲の人や地域の役に立つことを意識して行動してみてください。そうした姿勢が、これからの社会を支える大きな力になるはずです。

山下一也  岡山県出身。医学博士、専門分野は神経内科、神経心理学。島根医科大学医学部卒業後、1991年にカリフォルニア大学デービス校神経科研究員として留学。94年から津和野共存病院院長、その後、島根県立大学出雲キャンパス副学長などを経て、2023年4月から島根県立大学理事長・学長。