「お父さん、なんだか日本人じゃないみたい」。幼稚園児だった安田菜津紀は、父のひざの上から立ち上がって、そう問い掛けた。珍しく早く帰宅した父に絵本を読んでもらっていたが、父は言葉を何度もつっかえ、次第にしどろもどろになる。辛抱できなくなり、不満をぶつけたのだった。

 父は物静かで、いつも笑っていた。だが、その時は、少し悲しそうな顔をしていた。

 「私が発した言葉がいかに残酷だったかを、当時はまったく知りませんでした。ただ、言ってはい...