まず、われわれは苦しんだ人間の前で、歴史の前で絶句することだ。ひとたび絶句して語り始めた言葉と、頭で知った言葉では、意味の力がまるで違う。どこかに書いてあることをなぞるだけでは伝わらない。心から出た言葉は心に届く-。
公開中の映画『手に魂を込め、歩いてみれば』を見て、批評家・若松英輔さんの言葉を思い出した。作品はイスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの攻撃が続く中、イラン出身の監督がパレスチナ人の若き写真家ファトマ・ハッスーナさんと1年にわたって重ねたビデオ通話を記録したものだ。
はじけるような笑顔の背後で、荒廃した街に爆撃の煙が上がる。封鎖による深刻な飢えにも見舞われる中、彼女はシャッターを切り続け、破壊された街に生きる人々の色と現実を写し取った。作中に差し込まれる一枚一枚が訴える力は強い。
2025年4月16日、25歳の命は空爆で奪われた。ガザでは攻撃開始から7万2千人以上が死亡したとされ、昨秋の停戦後も攻撃が続く。
出雲市内で先日あった上映会では、監督と交流を続ける配給会社の代表が「出発点は知ること。知って誰かに伝えることは行動になる。声は決して無力ではない」と語った。上映会を企画した市内の雑貨店「フェアトレードfuku-mimi」が14日までハッスーナさんの写真展を開催中だ。ガザから遠く離れた私たちにもできる一歩がある。(衣)














