短歌 宮里 勝子選

憂きことを癒す小庭の露草の露に落ちたる十六夜の月       出 雲 遠藤  伸

 【評】それほど広くない庭ではあるけれど、普段から手入れを怠らず、それがまた作者の解放感にもつながっている。露草の露に映る月を〝落ちたる〟と見る力に詩情を感じ、よく見て描写する繊細な感性がうかがえます。

池になる深い涙の底にある光らぬものに触れられぬまま      松 江 宮本朝陽香

 【評】初句切れ。涙は深い池となり、その底に光を見いだしたいと願っている作者はまだ到達できていな...