原油高を背景にガソリン価格が7年ぶりの高値を付けた。燃料価格を基に算定する電気やガス料金も上昇傾向が続き、消費者への影響が拡大。自動車の電動化などで販売が先細りのガソリンスタンドは苦境が一段と深まっている。
「伝票を見て値段を気にする人が増えた」とため息をつくのは、東京都内のガソリンスタンドの男性店長(48)。今週にレギュラーガソリンを1リットル当たり170円台に値上げしたところ、販売量が先週から2割ほど減ったという。「(客から)高いねえと言われたが、利益を取らないと続けられない」と苦しい状況を明かす。
ハイブリッド車や電気自動車(EV)の普及などでガソリン販売量は年々減っており、この店も車両点検などに力を入れガソリンだけに頼らない経営を目指す。
しかし経済産業省によると、全国の給油所数は今年3月末時点で約2万9千カ所と、ピークだった1995年3月末の約6万カ所の半分以下に減少。ガソリンの高値で経営が圧迫されさらに数が減ると、公共交通機関が少ない地方では生活に支障が出る恐れもありそうだ。
大手電力10社が発表した来月の電気料金は、標準的な家庭で1年前よりも東京電力が14・0%、沖縄電力は17・1%上昇と各社とも大幅な値上がり。大手都市ガス4社も前年同月から6~9%台の上昇だ。電気やガスの料金は燃料の輸入価格を基に決まっており、家計にとってはさらなる打撃となる。
欧州では、新型コロナウイルス禍からの経済活動再開に脱炭素化の流れも加わり、天然ガスの価格が高騰している。日本が輸入する液化天然ガス(LNG)の大部分は長期契約で調達しているが、エネルギー価格の高止まりが長期化すれば、影響がじわじわと出てくる恐れもある。
企業は原材料や燃料のコスト増に身構える。化学メーカーの関係者は「納入先と交渉しても値上げが通らず、コスト負担をかぶる恐れがある」と警戒。過去に原油価格が乱高下した際にも同様のケースがあったという。
国際線の利用客が航空券の購入時に支払う「燃油特別付加運賃」(燃油サーチャージ)も、来年2~3月の発券分が上昇する可能性がある。日本航空は「当初の想定よりも燃料価格が上昇しており、事業の収支に影響が出るかもしれない」とした。