枯死の危機に直面する「定めの松」=大田市三瓶町
枯死の危機に直面する「定めの松」=大田市三瓶町

 樹齢約400年で大田市指定天然記念物の名松「定めの松」が枯死の危機にある。かつてはクロマツ2本が対を成していたが、1本は枯死して2008年に撤去され、もう1本も樹勢が著しく衰え、遠からず枯死は避けられない状態。地域のシンボルとして親しまれるだけに、切るとすれば、根を残すか、根こそぎ撤去するか、木を使って何らかの記念物を作るのかといった判断を迫られ、市や地元関係者が頭を悩ませる。
 国立公園・三瓶山西の原の県道沿いにあり、残る1本は樹高21メートル、幹回り5メートル。江戸幕府直轄の天領となった石見銀山の初代奉行・大久保長安が領内を検地し、交通網の整備などを手掛けていた頃、一里松として植えたとされる。
 松くい虫被害が進み、1本は07年に伐採、08年に根こそぎ撤去された。残る1本は年間約30万円の市費を投じて樹幹に薬剤を注入し、根の成長を促す菌根菌と炭を埋めるといった樹勢回復の措置を施し「延命」に努めてきた。しかし、変色が進むなど維持が困難になってきた。
 4、5年前から枝を接ぎ木し「二世松」を近くで育成中というが、悩みは現在ある木をどうするか、だ。
 長年、保存や維持に奔走した地元自然保護団体「大田の自然を守る会」の伊藤宏会長(81)=大田市大田町=は「もってもあと1、2年。残念だがこれ以上守ることは極めて難しい。今までよく耐えてくれた。市民には今のうちに目に焼き付けてほしい」と話す。今後については「伐採したマツで記念品を作成し、配布、販売することで後世に受け継ぐべきだ」と提案する。
 市教育委員会によると対応は未定。森博之教育部長は「庁内で協議し、専門家や地元の方とも相談して方向性を決めていきたい」と答えるにとどめる。
 (錦織拓郎)