先日、松江市中心部の古い飲食店に入ると、男子学生が1人で食事をしていた。

 「コロナ禍で昨年春から故郷に帰れなくなりました」

 学生は嘆いた。その古里には滋養に良いとされる郷土食がある。以前、その地で食べた思い出を明かすと、「それ、うまいですよね」と学生は満面の笑みを浮かべた。

 弾む会話に店主は「ちょっと作ってみたので食べてみて」と、こうじで作った珍味を差し出した。

 飲食店に入ると時々、思わぬ出会いがある。誰にも話しかけられなくても周囲に耳を傾ければ、地域の人が...