10月の出雲駅伝で、沿道での立ち入り制限エリアを管理するボランティアスタッフら=出雲市大社町杵築
10月の出雲駅伝で、沿道での立ち入り制限エリアを管理するボランティアスタッフら=出雲市大社町杵築

 島根県内各地で、マラソンや駅伝シーズンが本格化しつつある。10月に入り新型コロナウイルス感染状況は落ち着いているが、主催する自治体によっては感染が猛威を振るった昨年に続き、中止する動きが出ている。他方で、出雲市のように今年に入って地元住民をターゲットにしたマラソン大会や、出雲駅伝などのビッグイベントを立て続けに開催する自治体もある。背景には、地元のボランティアスタッフの迅速な確保など、これまで積み重ねた実績がある。 (藤原康平)

 コロナが猛威を振るった昨年来、大会が開けなかったのはワクチン接種が進んでおらず、高齢者が感染した場合の重症化リスクなどを考慮したことが要因。各種マラソンや駅伝を主催する自治体は軒並み、開催を断念した。

 「コロナ対応2年目」となる今年は夏以降、高齢者を中心に一定程度ワクチン接種が進んだが、自治体の対応は分かれた。松江市で12月に予定された「国宝松江城マラソン」が2年連続中止の一方、出雲市ではワクチン接種が行われていなかった3月「出雲くにびきマラソン大会」を例年の3分の1の規模ながら、開催。10月には、昨年中止だった出雲駅伝も復活した。

 同市のスポーツ関係者は開催判断に当たり、コロナ感染のリスク管理もさることながら、大会ボランティアがきちんと確保できるかどうかが重要な要素になるとみる。市の市民文化部文化スポーツ課の鴨木淳係長(47)は「地元の協力的な姿勢で開催できた」と話す。

 例えば出雲駅伝の開催に当たっては、ボランティアが中心となるコース上の交通整理員と走路員を務める人数を2年前より約300人減の800人に設定。地区体育協会や交通安全対策協議会に交通整理員の動員を依頼し、新たな試みとして、地元企業や学生ボランティアにも協力を要請。企業は、約20社から計200人、島根大学から15人がボランティアに加わるなどして乗り切った。

 運営面では、沿道で声援を送る人の立ち入り制限エリアを拡大したほか、交通整理員の配置を見直し、人数減を吸収した。

 ボランティアの取りまとめは、地区ごとのコミュニティセンターが担う。出雲駅伝で19人の交通整理員を派遣した今市コミュニティセンターの打田祥一センター長(63)は「長年やってきて作り上げた体制や流れがあり、大会が開催できた一つの要因」と話す。

 市内では31日、今年で43回目を迎える一畑薬師マラソン大会も、山陰両県在住の840人が出場して開催される。参加者は日本一過酷な石段マラソンに挑む。