宍道湖畔のコハクチョウ(宍道湖グリーンパーク提供)
宍道湖畔のコハクチョウ(宍道湖グリーンパーク提供)

 秋から冬にかけて、宍道湖や中海周辺には多くの水鳥が飛来する。「冬の使者」とも呼ばれるコハクチョウが、10月7日に米子市の水鳥公園に、9日には宍道湖に、それぞれ今年初飛来した。コハクチョウのほかにも、マガンやカモといった水鳥が徐々に増え、山陰の水辺がにぎやかになる季節を迎えた。せっかくなら観察の楽しみ方や見どころを知りたい。専門家に水鳥の魅力や観察の楽しみ方、観察時の注意点を聞いた。(Sデジ編集部・宍道香穂)

 向かったのは、出雲市園町の宍道湖グリーンパーク。公益財団法人ホシザキグリーン財団が管理・運営する多自然型公園で、生き物や自然に関する展示が楽しめ、展望室からは望遠鏡を用いた野鳥観察を体験できる。パーク内で鳥類などの研究を行うホシザキ野生生物研究所の岩西哲(さとる)さん(45)に話を聞く。

ホシザキ野生生物研究所の岩西哲さん(45)

▷宍道湖や中海で見られる水鳥たち
 秋から冬に宍道湖や中海で見られる水鳥は「冬鳥」と呼ばれる渡り鳥で、夏季にロシア北東部で産卵し、冬を越すため10~11月に飛来して3月頃まで日本で過ごす。逆に、冬季を南半球で過ごし、春から夏を日本で過ごす鳥は「夏鳥」と呼ばれ、ツバメやアマサギが挙げられる。
 冬鳥として代表的なのは、ハクチョウやガン、カモ。岩西さんは、「実はカモもガンもハクチョウも、同じカモ目に分類されます」と説明する。見た目はかなり違うのにすべてカモの仲間と聞き、驚いた。さらに驚きなのが、生まれたばかりの幼鳥も親鳥たちと同じように長距離を移動すること。ハクチョウと比べて体が小さいカモも、大移動をする。「あんなに小さい鳥も!?」と驚いていると、岩西さんは「もちろん途中で休みながらの移動ですが、大変だと思いますよ…」と、優しい目で答えた。

スズガモ(以下すべて宍道湖グリーンパーク提供)
コハクチョウ
キンクロハジロ

 宍道湖や中海で主に見られる冬鳥は、スズガモやキンクロハジロ、コハクチョウ。キンクロハジロはカモ科の潜水鳥で、宍道湖グリーンパークのマスコットキャラクター「キンちゃん」のモデルとなっている。

宍道湖グリーンパークのマスコットキャラクター「キンちゃん」

▷水鳥観察の楽しみ方は無限大
 岩西さんによると、水鳥は観察に向いているという。「動きがゆっくりで、大きい鳥が多いため、望遠鏡や双眼鏡で追いかけやすいのです。大型の鳥は肉眼でも十分に観察できます。野鳥観察の入り口として、水鳥の観察はお薦めです」と説明する。新緑の頃や夏、森の中で野鳥の鳴き声が聞こえても姿を見つけられないことが多いが、水鳥は水面に浮かんでいるため見つけやすそうだ。
 水鳥観察の楽しみ方について、岩西さんは「鳥の種類が詳しくわからなくても、見方次第で十分におもしろくなります」と教えてくれた。例えば、多くのカモは雄と雌で体毛の色が異なり、同じ種類とは思えないほど見た目が違う。雄は雌にアピールしやすいよう、時期によって羽の色が変わり、11月頃から次第にカラフルで派手な見た目になっていくのだそう。

マガモ。奥が雌で、手前が雄。

 「パーツごとの毛の色に注目するのも楽しいです。目の色、くちばしの色など、部分によって全く色が違って、パーツによってこんなに色が違うのか!と発見が楽しめます」と岩西さん。1羽の鳥の中にもさまざまな色が見つけられるのは、確かに楽しそう。例えばキンクロハジロは、目が金色、羽が黒色で、おなかの部分の毛が白色。「キン」「クロ」「シロ」と、名前にすべての色が入っている。なるほど、名前で色を説明しているのか。

▷本当に同じ鳥?見た目の違いにびっくり
 同じ鳥でも、種類により大きさや体型、色が異なるのも見どころ。よく見るマガモの体長は約59センチだが、コガモと呼ばれるカモはその名の通り、成体でも約37センチと小柄。半分とまではいかないが、マガモの約3分の2の大きさで、近くに並ぶとまるで大人と子どものように見えそうだ。体型も、種類によって違いがある。例えばマガモやコガモは全体的にふっくらとして首が短いが、カルガモやハシビロガモは首が長くシュッとした体型で、シャープな印象だ。

コガモ
ハシビロガモ

 また、コハクチョウは大人と子どもで見た目がまったく違う。成体はイメージ通りの真っ白な羽だが、幼体は少し黒ずんだ、灰色っぽい羽をもつ。「童話『みにくいアヒルの子』でも、灰色の小鳥が真っ白なハクチョウに成長していますよね」と岩西さん。
 くちばしの色も大人と子どもで異なる。先端は成体も幼体も黒色だが、幼体は薄いピンク色。大人になるにつれて、おなじみの黄色になっていく。

コハクチョウの親子。左が幼体で、右が成体。

 一見それほど違いがなさそうな鳥たちも、よく見てみると色や形、体型がさまざまで、それぞれの美しさ、かわいらしさが感じられそうだ。後編では、水鳥が作り出す美しい光景や観察時の注意点を紹介する。