日本で5~11歳の子どもに対する新型コロナウイルスワクチン接種の議論が進む中、世界でも子ども向けを承認した国が増えている。ロイター通信などによると、少なくとも16カ国が20日までに、11歳以下が対象の接種を認めた。米国は今月から5~11歳対象の投与を始め、中国は年齢を3歳まで引き下げた。ただ、接種が遅れる発展途上国への供給を優先すべきだとの意見もある。
米国では新規感染者が10月下旬から徐々に増加。冬を前にして集団感染による休校などへの懸念もあり、5~11歳へのファイザー製の投与を決定した。通常の3分の1の量を、3週間間隔で2回接種する。
開始から10日ほどで推定260万人が接種を受けた。一方、米カイザー・ファミリー財団の調査によると「長期的な影響がよく分からない」などの理由で、重症化しにくい子どもへの接種を模様眺めとしたり、拒否したりする保護者は6割超に上る。
イスラエルは今月14日、5~11歳へのファイザー製ワクチン接種を承認。カナダも19日に承認した。感染を極力抑制する「ゼロコロナ」を貫く中国では3~11歳への国産ワクチン接種が各地で進む。冬季五輪を来年2月に控える北京では10月下旬に始まった。
インドネシアは6~11歳への接種に中国製を承認。南米アルゼンチンやチリなどもこうした年齢層へ中国製の接種を始めている。カリブ海のキューバは2歳以上への投与を進め、中米コスタリカは5歳以上の接種を義務化した。
日本では厚生労働省のワクチン分科会で専門家が5~11歳への接種に関し協議中。厚労省は早ければ来年2月ごろに始まる可能性があるとし、自治体に態勢づくりの準備を求める事務連絡を16日付で出した。欧州連合(EU)の医薬品規制当局、欧州医薬品庁も審議中だ。
アフリカなど途上国では医療従事者への接種も進んでいない。国連児童基金(ユニセフ)は「命を守る人の命を守らなければならない」と強調。先進国とのワクチン格差解消を訴えている。
■保護者の不安解消が鍵
世界各国で11歳以下の子ども向けの新型コロナウイルスワクチン接種が承認された。子どもは感染しても重症化するケースが少ないという考えなどから、慎重になる保護者は多い。接種が順調に進むかどうかは、不安を抱く保護者の説得が鍵となりそうだ。
世界有数のスピードでワクチン接種を進めたイスラエルは、今月14日に5~11歳への接種を承認、近く開始する方針だ。ベネット首相(49)は「接種させるかどうかは保護者の判断だが、子どものために受けさせてほしい」と強調、自身も9歳の息子に接種させると明言した。
地元メディアによると、最近の新規感染者のうち約半数は11歳以下の子どもだ。だが、重症化するケースはまれで、コロナの死者約8150人のうち、子どもは約10人。多くの場合、持病があったとみられている。バルイラン大が9~10月に保護者へ行った調査によると、「直ちに接種させたい」が27%だった。「接種させない」は23%で、その理由として安全性への懸念を挙げている。
北部ハデラ郊外の経営コンサルタント、トメル・アミエルさん(45)は「5年後、10年後に何が起きるのかは分からないし、政府は責任を取らないだろう」と話す。
日常生活の利便性向上のために接種させるとの声も。イスラエルではレストランの店内飲食をはじめ各種イベントの参加にワクチン接種証明の提示が必要。未接種の子どもは事前のPCR検査が必須で、5歳児でも接種証明を得られれば、保護者の負担は大幅に減る。
エルサレムのロテム・ゴールドシュミッドさん(46)は長男(9)に接種させるといい、「親子のイベントに参加するのが楽になる」と話した。
インドネシアは11月1日、6~11歳の接種に中国製ワクチンの緊急使用許可を出した。早ければ来年初めから始まる見込みだ。国内では学校の対面授業を段階的に再開、6~11歳への接種を求める声が政府内や医師会から高まる。
保護者たちはおおむね接種に前向きのようだ。7歳男児の母スカルサリさん(33)は「使用許可が出ている。安全性を疑う理由はない」と楽観視。9歳男児と5歳女児を持つ公務員ヒクマニンシさん(35)は「コロナの治療薬はまだない。ワクチン接種だけが(子どもを)感染から防ぐ唯一の方法」と訴え、「義務化すべきだ」(別の30代母親)との声も上がっている。(エルサレム、ジャカルタ共同)