「自分の力を出し切れるかどうかを気にしていた」。21日の第29期倉敷藤花戦3番勝負でフルセットの末、タイトル防衛を果たした里見香奈女流四冠が淡々と振り返った。第1局の快勝、序盤の誤算が響き星を落とした第2局を経て迎えた最終第3局は、重圧を感じさせない冷静な差し回しが光った。(佐貫公哉)
第2局の翌日に第3局が控え、敗局の心理的影響が心配されたが無用だった。「すごくほっとした」と防衛の本音を明かしたが、立会人の清水市代女流七段(52)は「短時間で立て直す強さがある。王者の風格を感じさせた」と落ち着いた戦いぶりを評価した。
女流棋界の第一人者として今回も実力を示した里見女流四冠には、トップゆえの過酷な連戦が続いた。今秋は四つの女流タイトル戦が並行して進み、11月は女流王将戦、清麗戦で勝者決定局に臨んだ。
めまぐるしい状況にも「どこまでがむしゃらにできるか、今後のモデルになると思い対局した」と振り返る。自己鍛錬の機会と前向きに捉えているようだ。12月は女流王座戦5番勝負の勝者決定局がある。「疲れはある。なるべく早く休んで向かいたい」と早くも次の戦いを見据えた。