コロナ変異株「オミクロン」を巡る動き
コロナ変異株「オミクロン」を巡る動き
コロナ変異株「オミクロン」を巡る動き

 新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン」に世界が警戒を強めた。性質はほぼ不明だが、デルタ株をしのぐ感染力が疑われ、ワクチン効果を低下させる懸念も。ワクチン接種の遅れが看過されてきたアフリカで変異が加速し、危険なウイルスの〝ゆりかご〟になったのか。国際社会はワクチンの公平分配を怠り、保健医療が脆弱(ぜいじゃく)な地域を後回しにしたつけを払わされる恐れがある。

 11日、南アフリカ渡航歴がある旅客が香港に到着し、ホテル5階の部屋で隔離を始めた。新型コロナ感染を疑う症状はなかったが、2日後の検査で陽性となり入院。18日には向かいの部屋で隔離していたカナダからの帰国者も陽性となった。

 感染したのはオミクロン株。2人のウイルス遺伝子も一致した。隔離中で接点がないはずの2人。南ア渡航者がサージカルマスクを着けずにドアを開けた際、周囲の空気が廊下に広がり、換気の悪さも手伝って、向かいの部屋の帰国者にウイルスが伝わったのではないか―。当局の調査で一つのつながりが浮かんだ。

 世界保健機関(WHO)などによると、オミクロン株には約50カ所と多数の遺伝子変異がある。特に人間の細胞に侵入するのに必須の「スパイクタンパク質」には30以上あり、既知の変異株以上に感染しやすい恐れが指摘された。

 南アはこれまでに三つの大きな感染の波を経験した。7月をピークとする直近の波はデルタ株によるものだったが、この数週間、オミクロン株の検出と呼応するように感染者数が急増した。世界で主流となったデルタ株を駆逐するかのような勢いがうかがえる。

 南アは24日、WHOに新変異株の発生を報告、情報が駆け巡ると各国は即座に渡航制限に動いた。だが感染症疫学が専門のウールハウス・英エディンバラ大教授は「時間稼ぎにしかならない」と指摘。ベルギーやイスラエルでも感染者が確認され、早晩、世界に広がるとの見方が出る。

 大きな懸念は、体内に入った異物を排除する免疫から逃げる能力を強めるような変異があることだ。WHOは「デルタ株などに一度感染した人も再感染する危険が増したかもしれない」とする。

 ワクチンの効果が損なわれる心配もある。香港の感染者は2人とも2回接種を終えていた。米モデルナは26日「ウイルスの進化の先回りをする」として、一部で始まった追加接種の用量増加を試みるほか、オミクロン株も持つ変異に対応した修正版ワクチンの開発を進めていると表明。オミクロン株に特化したワクチンを2~3カ月で臨床試験に持ち込めるとの展望も示した。

 ただ、既存ワクチンの効果がゼロになるとは考えにくく、バイデン米大統領は「初回接種や追加接種がまだの人は今すぐ打ってほしい」と呼び掛けた。

 米ジョンズ・ホプキンズ大によると、南アで接種を完了したのは24%。隣のナミビアやモザンビークでは11%台とさらに低い。このまま感染が急拡大すれば、危険な変異株がさらに生まれる温床になる恐れもある。

 テドロスWHO事務局長は「最も弱い人々を守るため、ワクチンの公平供給を加速しなければ」と強調。南ア当局者は国際社会に訴えた。「制圧に力を貸して」(ワシントン共同)