小中高校などを運営する全国56の国立大学法人のうち、埼玉大や高知大など20法人で、付属校に勤務する教員の時間外労働に対する割増賃金の未払いがあったことが5日、共同通信のアンケートで分かった。うち鳥取大など18法人が労働基準監督署から是正勧告を受けていた。未払いの残業代を明らかにした14法人の総額は計約8億6990万円に上った。
未払いがあったのは他に山形大、筑波大、京都教育大、長崎大など。島根大は未払いがなかった。
11月に勧告を受けて未払い額を算出中の三重大と、アンケートに金額を明らかにしなかった5法人を含めると、全体額はさらに増える。未払い額は高知大が約2億7千万円、広島大が約2億円、埼玉大が約1億2千万円、鳥取大は103万3千円だった。
長期間にわたり未払いを続ける一方、労基署の勧告を機に、残存する記録に基づき計算した数年分のみを「未払い分」とした法人もあり、今回明らかになった金額は、これまでの総額に対して「氷山の一角」である可能性が高い。
2004年に国立大が法人化するまで、付属校の教員は公立校の教員と同様に「教職員給与特別措置法(給特法)」の適用対象で、時間外勤務手当を出さずに月額給与の4%に当たる「教職調整額」が支給されていた。法人化に伴い、労働基準法に基づき時間外労働に対する割増賃金を支払わなければならなくなったが、旧来の給与体系を続けたとみられる。一部は違法状態を黙認していた可能性がある。
国からの「運営費交付金」は年々減少傾向で、付属校の経費も賄わなければならない中、各法人が適正な残業代を支給するには、業務のスリム化による長時間労働の解消や収入を増やすための経営努力が求められる。
20法人のうち鳥取大を含む9法人は「法人化後も給特法が適用されると誤認していた」と理由を回答。6法人は、労基法の対象となることは理解していたとしつつ「教員の労働時間を正しく把握できていなかった」と釈明した。
共同通信は11月、付属小中高校、幼稚園、特別支援学校を運営する全国立大学法人を対象に、未払い賃金の有無や総額、期間について担当課から主に文書で回答を得た。北海道教育大と富山大、金沢大、信州大の4法人は回答しなかった。