特別展「金津滋の図案」の作品を鑑賞する来場者=出雲市知井宮町、出雲民芸館
特別展「金津滋の図案」の作品を鑑賞する来場者=出雲市知井宮町、出雲民芸館

 自動車メーカーのスズキが、エンブレムの「S」マークを変更した。と言っても素人目にはどこが変わったか分からないほどだが、身の回りにあふれる工業デザインや商品ロゴは気付かぬうちに変わるものが多い。時代の空気を読み取って変えないと売り上げに影響するそうだ。

 反対に何十年も変わらず愛されるデザインもある。切り絵で作られたラフカディオ・ハーンの横顔や後ろ姿の肖像もその一つ。松江市民にはなじみ深い、どこかハイカラな印象がある図案だ。

 作者は切り絵や染物、陶芸を得意とし、松江を拠点に活動した金津滋氏(1923~96年)。古美術の蒐集家(しゅうしゅうか)で、大阪の料亭・吉兆で修業した料理人、そして茶人でもあった。多芸多才な中で光ったのが、切り絵を使ったグラフィックデザイナー的な仕事だ。

 青年期に河井寛次郎の薫陶を受けて審美眼を磨いた。「流行や変化があっても根底に不変の美があるのが真理」が持論で、山陰の暮らしの中に「美しさ」を追求する姿勢は、民芸運動の柳宗悦、芹沢銈介らも高く評価した。

 1976年から2年間、本紙に寄せた連載記事「工藝の美と心」には、「流行に流されず自分自身に似合うものだけを使いなさい」と書いている。コスパやタイパ、流行に追い立てられている現代人に、金津氏の仕事は語りかけてくるようだ。特別展「金津滋の図案」が出雲民芸館(出雲市知井宮町)で開催中。(裕)