厚生労働省は13日、新型コロナウイルス感染拡大で特例措置を設けている雇用調整助成金(雇調金)などの支給決定額(10日時点)が2020年春からの累計で5兆462億円になったと明らかにした。失業者の大幅な増加に歯止めをかけた一方で、膨大な支出で保険財政は危機的な状況。一般会計からも臨時で予算が投入される事態を前に、政府は労働者と企業が支払う保険料率を22年度から引き上げる方針だ。
財源を巡っては当初予算を使い切り、失業手当などに充てる積立金を流用している。21年度補正予算案では、雇用保険に約2兆2千億円の繰り入れが決まったが、給付を抑えるため、年明けからは日額上限の特例を段階的に縮小する。
雇調金は企業が支払う休業手当を、国が部分的に補〓(ほてん)する制度。パートやアルバイトら雇用保険未加入者には緊急雇用安定助成金が同様の形で支払われており、厚労省は二つの助成金の合計額を集計して、毎週月曜日に公表している。
コロナ禍の雇用悪化を防ぐため、政府は特例措置を拡充。通常は中小企業3分の2、大企業2分の1の助成率を業績が著しく悪い企業などは最大10割まで引き上げ、日額上限額も約8300円から1万5千円とした。
リーマン・ショック後は5・5%まで悪化した完全失業率も、コロナ禍では最悪時でも3・1%にとどまる。雇調金により大幅な失業率悪化は抑えられたが、休業長期化は従業員の士気低下やスキルアップの機会を奪うとの懸念は根強い。不正受給も後を絶たない。
厚労省によると、二つの助成金のうち90%超を雇調金が占める。合計額は21年度だけでも約1兆9千億円で、毎月約2千億円の支給が続く。
19年度末に約4兆5千億円あった雇用保険の積立金はほぼ枯渇した。保険料率は良好な経済情勢を背景に17年度から労使で賃金の計0・9%に抑えてきたが、政府は引き上げる方向で調整。22年度は0・45%増の1・35%とする案も出ている。













