浜田市旭町で撮影した米軍機真を手に低空飛行訓練の実態を説明する島津弘幸さん=浜田市殿町、浜田記者クラブ
浜田市旭町で撮影した米軍機真を手に低空飛行訓練の実態を説明する島津弘幸さん=浜田市殿町、浜田記者クラブ

 島根県西部での米軍機低空飛行訓練で県内の定点観測5地点のうち4地点の騒音回数が年間過去最多に上ることが22日、分かった。11月末現在で、最も多い浜田市旭町丸原は前年1年間より44%増の1030回。日に何度も飛来し、自動車の警笛を間近で聞く音量に匹敵する騒音をまき散らすこともある。米軍岩国基地(山口県岩国市)の拠点強化が背景にあるとみられ、被害悪化が際立ってきた。

 

 定点観測は防衛省中国四国防衛局が騒音被害に悩む住民の長年の訴えを受け、2013年9月から実施。当初は浜田市旭町丸原と広島県北広島町西八幡原の2地点で始め、現在は島根、広島両県の8地点で調べる。「騒々しい街頭」に相当する70デシベル以上の騒音回数などを毎月公表する。

 騒音は16年以降はやや減少傾向にあったが、20年ごろから再び大きく増加。21年は11月末現在で、浜田市旭町丸原1030回(前年713回)▽益田市匹見町道川355回(同183回)▽江津市桜江町川戸247回(同247回)▽川本町南佐木76回(同67回)|4地点で、既に過去最多となった。邑南町日和は123回(同238回)だった。

 広島県側の3地点でも、安芸太田町戸河内152回(同135回)が過去最多を観測。北広島町西八幡原1024回(同882回)と同町荒神原662回(同698回)も最多を更新する可能性がある。

 米軍機の飛来に規則性はうかがえない。被害が最も深刻な浜田市旭町丸原は6月に200回を観測し4、9、11月もそれぞれ100回を超えた。島根県西部一帯で円状などの飛行機雲の目撃が相次いだ11月29日には、自動車の警笛を間近で聞く音量に匹敵する107・4デシベルを観測した。

 米軍機低空飛行訓練の実態を追うフリーカメラマン、島津弘幸さん(61)=浜田市旭町今市=は現状を「必ず2機で来る。昨年以降、体感でも明らかにひどくなった」と説く。多い日は5回以上飛来し、急旋回や急降下を繰り返しながら1回当たり30分間もごう音をまきちらすという。

 浜田市防災安全課の佐々木真司課長は浜田、益田など5市町でつくる対策協議会が24日にあることを念頭に「(騒音増加の)状況は把握している。協議会で対策を話し合い、解決に向けて取り組む」と話した。

 観測地点がある中国山地の一帯は「エリア567」と呼ばれる在日米軍の訓練空域があり、岩国基地に近い。岩国基地は近年、厚木基地(神奈川県)から部隊移転が進められ約120機を擁する極東最大規模の航空軍事拠点になっている。
 騒音測定は国とは別に、島根県や浜田市が独自に実施する地点もある。
 (勝部浩文)