島根県が東京都内で運営しているホテル「島根イン青山」(東京都港区)が27日に営業を終え、34年の歴史に幕を閉じる。県民割引があり上京時の宿泊先として親しまれ、立地の良さから一般客にも広く人気を集めるなど、島根と東京の「ご縁」を結ぶ場だった。行財政改革の一環で畳むものの「名残惜しい」との声がホテルに届いている。
「四半世紀、常宿(じょうやど)でした」「長い間お疲れさま」。ロビーの一角に19日から設置するメッセージボードには、宿泊客が思い思いにつづった言葉が並ぶ。
閉館が間近に迫る中で、感謝や惜しむ声が連日のように寄せられたことから急きょ企画。木原貴寿総支配人(44)は「皆さまそれぞれに思い入れがとても強い。改めて、人と人がつながる場所になっていたんだと分かり、感慨深い」とボードを見つめた。
ホテルは1987年に開館し、客室は48室。渋谷、表参道、六本木などの駅から近く、県民はシングル素泊まりの場合1泊6100円と安価で泊まれることから、出張や観光で人気を集めた。県は施設の老朽化に伴い、多額の維持管理費が発生することなどを理由に2019年に廃止方針を示した。
新型コロナウイルスの新規感染者数が落ち着いた10月以降、県内からの宿泊客数は徐々に回復。「どうしても閉館前に泊まっておきたかった」というリピーターも訪れた。
今年は、県アンテナショップ・日比谷しまね館(東京都千代田区)から商品提供を受けて県産の米や飲料などをプレゼントするキャンペーンも実施した。閉館後も島根とのつながりを持ってもらうきっかけづくりが狙いで、木原総支配人は「この場所で生まれた島根との縁が、今後もいろいろなところで広がり続けてほしい」と期待を込めた。
(白築昂)














