いいかげんにしろ。多くの国民は、そう思っているのではないか。またも与党国会議員の「政治とカネ」が事件化した。東京地検特捜部による遠山清彦元公明党衆院議員の在宅起訴である。

 罪名こそ貸金業法違反だが、要は融資の口利きだ。企業などに頼まれ働き掛けた先は、自身が副大臣を務めたこともある財務省所管の政府系金融機関。約1千万円の謝礼を受け取っていたという。

 この2年余り、自民党議員の「政治とカネ」事件が噴出した。元法相の実刑や妻の元参院議員の有罪が確定した選挙違反、元副大臣が実刑判決を受け控訴した統合型リゾート汚職、元農相が公判中の鶏卵汚職…。

 そこに元公明党議員の起訴である。「信頼回復」「おわび」。そんな掛け声だけでは信用できない。不当な口利きを抑止する制度的な担保が必要だ。

 起訴状などによると、遠山元議員は2020年3月~21年6月、100回以上にわたって、新型コロナウイルス関連融資を希望する企業などの意向を日本政策金融公庫に伝えた上、公庫の役職員を紹介し、謝礼を受け取ったとされる。

 この期間には財務副大臣在任中や退任後、21年2月の議員辞職後まで含まれており、その権限は一定ではないが、現職または元議員の威光があればこそ、可能な口利きだったことは間違いない。

 この事件は、16年に表面化した自民党の甘利明前幹事長の口利き疑惑を思い起こさせる。

 都市再生機構(UR)との補償問題を抱えていた千葉の建設業者に頼まれ、甘利氏の元秘書がURに口利き。同氏は業者から直接100万円を受け取ったことを認め、経済再生担当相を辞任した。

 当時、特捜部はあっせん利得処罰法違反容疑などで捜査。同法は、国会議員・秘書、地方議員らが官庁などに口利きをし、報酬を得る行為を処罰するものだが、通常の陳情と区別するため要件を厳しくしており「(政治家の)権限に基づく影響力を行使した」口利きを対象としている。「議会で取り上げる」など権限をちらつかせることが必要とされる。

 これらが捜査の壁となり、甘利氏らは不起訴となった。遠山元議員は議員辞職後の口利きが含まれるなど、さらにハードルは高かったはずだ。特捜部は収賄容疑も検討したが、副大臣退任後も口利きしており、適用を見送ったという。

 刑事司法は万能ではない。不正な口利きを抑止する方策が必要だ。中央省庁や独立行政法人などの役職員が国会議員や元議員らと接触した際、相手の要請を記録し公開することを義務付ける制度を検討したらどうか。

 地方自治体レベルでは既に広がっている。野党が法制化を目指したこともあった。「徹底した再発防止策を講じる」(公明党幹部)と言うのなら、与党には必ず実現してもらいたい。

 甘利氏は現職幹事長として臨んだ先の総選挙の選挙区で敗北した。UR疑惑の十分な説明責任をいまだに果たしていないことが一因とされた。

 今回、遠山元議員とは別の前衆院議員の元政策秘書も、独自に公庫に口利きしたとして在宅起訴された。この前議員も公明党所属だった。「誠実・清潔・正義」を旨とするこの政党はどう説明するのか。有権者は、きちんと見ている。