生活をめぐるささいなつまずき。何げない場面に見えても、そこには社会が抱える欺瞞(ぎまん)やケアのほころびが確かに潜んでいる。高瀬隼子という作家は、そこであえぐ人びとの声を聞き逃さない。

 芥川賞候補にもなった前作「水たまりで息をする」では、風呂に入れなくなったことをきっかけに社会集団から弾(はじ)き出されてしまう夫婦の姿を描いた。新作「おいしいごは...