9年近くにわたった安倍、菅両政権によって、権威が失墜、空洞化した言論の府を再生させるときだ。通常国会が17日召集される。「聞く力」をアピールする岸田文雄首相、「政策立案政党」を掲げる立憲民主党の泉健太代表という与野党のトップの登場は、安倍・菅政治と決別し、国会の本来の使命である熟議と行政監視を取り戻すチャンスではないか。

 安倍晋三元首相、菅義偉前首相の下、国権の最高機関の機能は喪失した。森友、加計両学園や桜を見る会問題、日本学術会議の会員任命拒否、河井克行元法相と案里夫妻の大がかりな選挙買収事件など相次ぐ「政治とカネ」を巡る不祥事…。にもかかわらず、顕著になったのは、解明に後ろ向きで、疑問や異論に向き合わずに、徹底的に排除する政権の独善的な政治手法だ。

 時の首相が敵と味方を明確に区別するスタイルを駆使したことで、国民の分断をもたらし、霞が関の官僚は公文書の改ざん・破棄に手を染め、虚偽答弁もまかり通り、民主主義の根幹が揺らいだ。「逃げる政権、隠す官僚」の現象が一段と進み、三権分立がきしんでいるのが、日本の政治の「現在地」だろう。

 間もなく3年目に入る新型コロナウイルスとの闘いでも、専門家や自治体だけでなく、野党の提案にも耳を傾け、英知を結集しなければ、立ち向かえないという教訓が浮かび上がった。

 オミクロン株の感染が急拡大する中、その対策は最優先だ。傷んだ経済の回復、地球温暖化など人類共通の課題への対処、そして米国と中国の対立など不透明感を増す国際情勢に日本外交がどんな立ち位置を取るのか。人口減少と少子高齢化の加速に直面する中で、持続可能な社会の構築は、政治が「解」を導き出さなければならない、待ったなしの課題である。

 立法府を立て直すには、政権の姿勢の転換が欠かせない。まず首相自身が国会論戦に堂々と応じ、野党の質問にも丁寧に説明を尽くす。官僚に対しては資料の提出など情報開示の徹底を指示していく。そこから国民とのコミュニケーションが始まる。聞く力は野党に対しても向けられなければならない。森友問題をはじめとする負の遺産も、この国会でけじめをつけることが必要だろう。

 与党の責任も極めて重い。政府提出の法案などを数の力で成立させるだけで国会が役割を果たしたと言えるのか。たなざらしにするだけの野党提出の対案も論戦の俎上(そじょう)に載せ、良いところは取り入れる度量が試されている。疑惑が表面化すれば、議員が説明責任を果たす場を積極的に設定してもらいたい。一方、野党は「批判ばかり」という批判を恐れるあまり、行政監視の手を緩めることはあってはならない。

 めっきり開催が減った党首討論も、定期化し、討論時間を大幅に延長することで、少数党にも討論の機会を与えるような改革を真剣に検討すべきではないか。

 今年は150日間の会期の先に参院選が控えるだけに、政権は負担増など「痛み」の伴う議論を避け、野党は対決色を強めたいかもしれない。ただ、内政、外交の難局を乗り切るには、建設的な議論を経て幅広い合意を取り付ける努力が不可欠だ。岸田首相はもちろん、与野党の議員一人一人の真価が問われている。