岸田文雄首相の施政方針演説に対する各党の代表質問が衆参両院で行われ、通常国会の論戦がスタートした。

 昨年の衆院選敗北を受けて立憲民主党の泉健太代表は「政策提案型」の論戦を目指す考えを示していたが、代表質問では提案を交えながらも政権が先送りした課題や安倍、菅政権時代の「負の遺産」を取り上げ、追及に重点を置く姿勢を示した。

 政権に対して「是々非々」路線を取る日本維新の会も、新型コロナウイルス対策などでは政権とは異なる考えを示し、政権の姿勢を追及した。

 一方、対案提示に重点を置いたのは国民民主党だ。だが首相は、野党の対案に応じる考えは示さず、負の遺産に関しても従来の発言を繰り返す答弁に終始した。

 政権追及に関して野党の足並みはそろってはいない。しかし、立民や維新、共産各党の追及によって政権の抱える課題、負の遺産を解消しようとしない首相の姿勢が浮き彫りになったのは確かだろう。行政監視こそが国会の役目だ。野党は予算委員会などの場で政権への追及を続けるべきだ。

 立民の泉氏は、6月をめどに新型コロナの中長期的対策を策定するとした政府方針を巡り「遅すぎて驚きだ」と批判。病床確保のための感染症法改正案の今国会提出を見送ったことも追及した。

 首相は「これまでの対応を客観的に検証し、関係者と検討するための期間が必要だ」と理解を求めたが、喫緊の課題への対応としては遅すぎる。

 泉氏は森友学園問題を巡る訴訟への対応や菅政権による日本学術会議の会員任命拒否問題を追及。オミクロン株流入の「抜け穴」になったと指摘される在日米軍の法的地位を定めた日米地位協定の見直しや、沖縄県名護市での米軍基地移設工事の中止なども求めたが、首相は後ろ向きの答弁に終始した。

 立民の小川淳也政調会長は国土交通省の建設受注統計書き換え問題を取り上げるとともに、18歳以下への10万円給付方法の方針転換など相次ぐ政策転換を巡り、「確固たる信念、方針、配慮に欠けた優柔不断な朝令暮改だ」と批判した。

 首相は「国民にとって最善の対応を取る」と説明したが、一連の首相答弁は国民の理解を得られるだろうか。引き続き厳しく追及すべきだ。

 維新の馬場伸幸共同代表は、新型コロナ対応を巡り飲食店の営業時間短縮や利用人数制限などの措置がどれだけ感染拡大防止の効果があったのかを検証・総括すべきだと主張。首相が掲げる「新しい資本主義」に対しても「かすみに包まれたままだ」と指摘、具体的な政策と実行計画を示すよう求めた。多くの国民が知りたい課題だろう。

 馬場氏は一方で対案も示した。政府が創設する「こども家庭庁」は「中途半端」だと批判し、教育関連政策を統合する「子ども省」を提唱した。

 国民民主の玉木雄一郎代表は、施政方針で首相が表明した賃上げや人への投資に関して「賛成だ。知恵を出し合う国会にしよう」と主張、対案路線を明確にした。

 ただ、衆院で絶対安定多数の議席を持ち、結束して予算案や法案の成立を目指す政府、与党が、野党の対案を受け入れる余地はあるのか。首相の答弁を聞く限り、提案型の姿勢には限界があると指摘せざるを得ない。