先日発表された第166回芥川賞は砂川文次「ブラックボックス」(講談社)に決まったが、次点は九段理江「Schoolgirl」(文芸春秋)だった。太宰治の「女生徒」を現代的な、それでいて普遍的と呼ばれうる「母と娘」の物語に組み替え、両者の断絶と呪縛のありようを浮かびあがらせた意欲作だ。

 くしくも「文芸」春号の特集は「母の娘」。とかく「父殺し」に焦点を合わせ...