五条坂風景について説明する横山由美子主任学芸員=浜田市三隅町古市場、石正美術館
五条坂風景について説明する横山由美子主任学芸員=浜田市三隅町古市場、石正美術館
人気を博した石本正氏の裸婦や舞妓作品
人気を博した石本正氏の裸婦や舞妓作品
五条坂風景について説明する横山由美子主任学芸員=浜田市三隅町古市場、石正美術館
人気を博した石本正氏の裸婦や舞妓作品

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 浜田市出身の日本画家、故・石本正氏の生誕100年回顧展が22日、石正美術館(浜田市三隅町古市場)で始まった。石本作品は舞妓(まいこ)や裸婦といった、どこかはかなさが漂う女性美で知られるが、30歳の頃、拠点とした京都の町並みを描いた「五条坂風景」という1枚の絵に目が止まった。

 舞妓や裸婦の作品群はきめ細かく透き通るような柔肌や、色鮮やかな着物に目を奪われる。女性の曲線美が際立つ華麗な作風だ。

 五条坂風景は対照的に青いトーンでシックにまとめた。屋根の三角や壁の五角形と、直線的で単純な形を重ねたのが特徴的だ。ところが、「古めかしい」と画壇の評価は芳しくなかったようだ。

 それでも石本氏にとっては「原点」だったのか、生涯この作品を手放さなかったという。

 石正美術館の横山由美子主任学芸員は「その後、作風が大きく変わったが、本人の中で納得できる作品だったようだ」と説明する。

 石本氏は40代後半から70代まで舞妓や裸婦を集中的に描き、評価を不動のものとした。知られているのも女性美を描いた作品群。そんなイメージで丹念に描かれた「五条坂風景」と向き合うと「本当に描きたいものが実は別にあったのではないか」と、本音に迫ってみたくなった。

 それは、画壇のしがらみから離れ、動植物をモチーフとした晩年の作に込められているのではないか。つがいのコンドルには温かな男女の愛を、枯葉と花の取り合わせには歩んで来た道のりを…。7年前に他界した石本氏に尋ねられるはずもないがゆえに、推理や推察もまた楽しい。

 回顧展は6月12日まで。1936~2015年に描かれた80点が並ぶ。当日券は一般800円、高校・大学生300円、小・中学生200円。休館日は祝日でなければ月曜日。
      (板垣敏郎)