マッサージに向けて準備を進める錦織恵子さん=松江市津田町
マッサージに向けて準備を進める錦織恵子さん=松江市津田町

 密閉、密集、密接の「3密」が敬遠される新型コロナウイルス禍の中、患者の体に触れるマッサージ師は苦境に立たされてきた。客足が遠のいたのはもちろん、感染リスクが付きまとう。「コロナ疲れの人を癒やすのが仕事」と自らを奮い立たせ、踏ん張る日が続く。 (古瀬弘治)

 JR松江駅にも近い松江市津田町で「アナタの治療院Tera Pia(セラピア)」を営むマッサージ師の錦織恵子さん(50)は「4月は患者さんが4分の1に減った」と1年前を振り返る。

 2020年4月9日に山陰両県で初めて確認された感染者は駅近くの歓楽街の飲食店に勤務。クラスター(感染者集団)に発展した。出歩く客がめっきりと減り、錦織さんの店にも響いた。埋まっていた予約のほとんどがキャンセルとなり、収益は家賃も払えないほどに落ち込んだ。それでも、感染者が通っていたと思われかねないと風評被害を恐れて営業を続け、経費がかさんだ。

 盲学校でマッサージ師について学び、この道に入って32年。これまで経験のない状況に「しのげるのかな」と不安がよぎった。

 患者の体に触れる仕事柄、感染リスクが常に付きまとう。敏感にはなっているものの、弱視のため、マスク着用の有無といった患者の様子も即座には分からない。

 同業の仲間の中には観光客を相手に出張サービスを行う人がおり、観光客減少のあおりを受けた人も少なくない。「自分よりもひどい状況の人は多い。生活費になるはずの障害年金を切り崩している人もいるのではないか」と推測する。

 1年たった今も客足や収益はコロナ禍前に戻っていない。それでも、訪れるなじみの患者に励まされ、前を向く。「コロナ疲れを感じている人も多いと思う。癒やされたいと思った時に、癒やすのが私たちの仕事」