短歌 西基宜選

舞ひ降りる綿雪を追ひ童女(おとめ)らは舌に受くるよ雪の子のごと     雲 南 多田納 力

 【評】穏やかな空から舞い降りる綿雪、これを舌に受けようとはしゃぎまわる童女たち。見る見るうちに、その童女らが「雪の子」に変身して、私は夢の世界へと誘われる。

裸木の楓のうれは赤らみてわずかな冬日の空に向かえり      大 田 佐藤 徳郎

 【評】庭の楓(かえで)は葉をすっかり落とし裸になった。いよいよ冬の到来かと見遣れば、梢(こずえ)がわずかに赤味を帯びているのではないか。天は休むなく...