1日から、プラスチック製ごみの削減や資源化を促進するための「プラスチック資源循環促進法」が施行された。日常の暮らしにどのような影響があるのか。また、プラごみ削減のために消費者ができる取り組みは何か。公益財団法人・しまね自然と環境財団の葭矢(よしや)崇司さん(50)と伊藤玲子さん(58)に聞いた。(Sデジ編集部・宍道香穂)

▷事業者と消費者 双方の意識を強化
プラスチック資源循環促進法は、プラスチックごみの約8割が再利用されず廃棄されている現状などを背景に、政府が2019年に策定し、4月から施行された。消費者や地方自治体に加えて、小売業やサービス業といった事業者に、プラスチックごみの排出量削減や再資源化を求め、資源を有効利用し循環させることが目的だ。
主な対象となるのは、以下の「特定プラスチック使用製品」を客に提供している事業者。
特定プラスチック使用製品12品
小売業、飲食店など:フォーク、スプーン、ナイフ、マドラー、ストロー
宿泊業:ヘアブラシ、くし、カミソリ、シャワーキャップ、歯ブラシ
洗濯業など:ハンガー、衣類用カバー
前年度の特定プラスチック使用製品の提供量が5トン以上の事業者は「特定プラスチック使用製品多量提供事業者」となり、国から勧告、命令を受ける対象になる。勧告や命令に背いた場合は50万円以下の罰金が科される。
削減のための取り組みは各事業者が工夫して行う。例として、これまで無料で提供していた製品を有料化したり、包装を軽量化したり、紙類などほかの資源で代用したりなどが考えられる。

これまではプラスチックごみの削減というと、包装にプラスチックが使用されていない商品を購入するか、ごみをきちんと分別するなど、消費者側の心掛けが重視されていたが、今後は事業者側もプラごみを削減するか、再利用するよう仕組みが作られた。
葭矢さんは「今後はプラごみ削減に関して、事業者と消費者、両サイドの意識が強化されるのでは」と予想する。
資源循環促進法の適用に先駆けて、既にプラごみ削減に取り組んでいる企業も多くある。例えば、大手コンビニチェーンのファミリーマート(東京都港区)は、弁当類に付けるプラスチックのスプーンやフォークを部分的に穴が空いたデザインに変更し、軽量化している。
全国各地にホテルを展開しているスーパーホテル(大阪市)は、歯ブラシやカミソリといったプラスチック製のアメニティーを各客室に設置するサービスを廃止。フロントなどに設置して必要な人に取ってもらう仕組みとした。
資源循環促進法の施行により、こうした取り組みをする企業が大幅に増えると予測される。

使い捨てスプーンやフォークなどが必要かどうか、客に確認する取り組みについて葭矢さんは「これまでは消費者も事業者もなんとなく使用していたプラ製品に対し、本当に必要だろうか?と、いったん考える仕組みができた」と説明する。
確かに、弁当などを家に持ち帰って食べる場合はスプーンやフォーク、箸は不要なはずだが、サービスで付けられるとなんとなく使ってしまうことがある。これまでは当たり前のように受け取っていた付属品を「要りますか?」と確認されると、一歩立ち止まり、本当に必要かどうか考えるきっかけになりそう。
▷最も効果があるのは「リデュース」
プラスチックごみ削減の方法は、大きく3つに分けられる。不要なごみを出さないよう使用を控えてごみの発生量を減らす「リデュース」、一度使用したものを再利用する「リユース」、ごみを資源として加工し再び利用する「リサイクル」。三つの頭文字をとった「3R」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないか。葭矢さんは「これまでは消費者が中心に取り組んでいた3Rに、企業側も取り組むことになる」とした。

事業者と消費者のどちらも、最も効果的な対策は「リデュース」だ。葭矢さんは「例えばプラスチックごみを資源にして新たなものを作る(リサイクル)にも、エネルギーが必要となる。ペットボトルなどをそのままの形で再利用する場合も、除菌や清掃の手間がかかる。ごみの発生量が少なければ、処分したり、リサイクルをしたりする必要もなくなる」とした。
伊藤さんは「ごみ箱に捨てたら終わり、ではなく、捨てたごみがどのように処分されるのか、再利用にはどんな手間がかかっているのかといった点まで考えることが大切」と呼び掛けた。日頃手にする商品がどんな素材で作られているのか、ごみとして出した後はどのように処理されるのかを理解すると、ごみが出ないように心掛けたり、分別方法を守ったりといった行動ができるようになりそう。
▷購入する前に「考える」「選ぶ」を大切に
商品を購入する際、なんとなく選ぶのではなく、どんな資源が使われているのか、どのように生産されているのか、捨てる時はどうすれば良いかなど、よく考えてから購入する「エシカル消費」も有効という。なるべくごみが出ないような包装のものを選んだり、資源を再利用したパッケージの品を購入したりするよう心掛けたい。

また、せっかくならプラスチックごみに関わらず、ほかの資源やエネルギーについても配慮しながら暮らしたい。食料品や日用品などのパッケージについている「認証マーク」は商品選びの参考になるという。認証マークは、排気ガス削減のため貨物列車で輸送されている商品に付いている「エコレールマーク」、回収したペットボトルをリサイクルして作られた衣類や日用品に付いている「PET(ペット)ボトルリサイクル推奨マーク」などさまざまなものがあり、環境保護に配慮した製品や取り組みを示している。代表的なマークの意味を把握しておくだけでも、商品選びの参考になりそう。
葭矢さんは「商品を買うことは、その企業を応援するということ。購入は企業への投票と意識して、日頃の商品選びを考えてもらえたら」と話した。葭矢さんと伊藤さんは「無理をしたり、気負いすぎたりする必要はない」とした上で、「一人一人ができる範囲で、環境に良いことを心掛けてもらえたら」と呼び掛けた。
今回の資源循環法の適用は、これまでなんとなく行っていた商品選びや行動を見直し、ゴミを削減し、資源を有効活用する良いきっかけになりそうだ。