第一章 発端の夏(一)

 電車の扉が眠たげな空気音をたてて開き、矢(や)上(がみ)達(たつ)也(や)はバックパックを肩にかけて笛ヶ浜駅のホームに降り立った。

 午後一時五十二分。容赦なく日...