新谷 学氏
新谷 学氏

 山陰中央新報社の島根政経懇話会、米子境港政経クラブの定例会が14、15の両日、松江、米子両市内であった。週刊文春編集局長の新谷学氏(56)が「『週刊文春』はなぜスクープを連発できるのか?」と題して講演し、会社の基本姿勢やスクープの意義を語った。講演は厳重な新型コロナウイルス対策の下、行った。要旨は次の通り。

 スクープを連発できるのは三つの理由がある。常にスクープを狙う▽リスク・コストをかける▽ど真ん中を目指す-ということだ。

 特ダネを狙うには大変な手間と金がかかる。例えば、取材対象の接待現場に潜入しようとしても、狙い通りの席に通されない場合、ネタが取れずに記者が高級寿司(ずし)だけ食べて帰ることがある。割に合わないことが少なくない。

 大事なのは「文春記事は信用できる。価値がある」と思ってもらうこと。目先の一冊の収支は度外視で、コストをかけて書き切ることにこだわる。スクープを他メディアや捜査機関が追い掛けるいきさつを通して読者の信頼が得られる。信頼があれば情報も入ってくるといった好循環が生まれる。

 「ど真ん中を目指す」とはどういうことか。政治に関して主要メディアは、政権の擁護派と批判派に色分けされがちだ。こうした分断状態は、双方が思考停止状態で民主主義に反する。

 これまで、森友学園や野党の幹部候補のスキャンダルなどを報じた。私たちは与野党でも右翼、左翼でもなく、あらゆる権力や組織から等距離を保ち続けるよう努めている。結果、双方に嫌われるが、本当に大事な時に頼りにされもする。

 スクープを狙うリスクは大きい。事実一つ間違えば逆襲の恐れがあり、記者の身にも危険が及ぶ可能性がある。ただ、誰かがリスクを取らなければ明るみに出ないことが多々ある。記事にすることが世のためになるという使命感を記者と共有するよう努めている。(多賀芳文)