野党が分断され、自民党「1強」体制の固定化を促しかねない。それが労働者の待遇改善につながるのか。国会の行政監視機能を強化するためにも、初心に返って巨大与党と対峙(たいじ)する勢力の結集に尽力してほしい。

 日本最大の労働組合の中央組織である連合は、旧民主党の流れをくむ野党陣営の支持基盤である。ところが昨年10月に芳野友子氏が会長に就任後、秋波を送り続ける自民党への接近が目につく。

 今年1月に連合が開いた新年交歓会に、自民党総裁の岸田文雄首相が現職首相として9年ぶりに出席。「政治の安定」のためだとして、与党への協力を要請した。すると、連合は2月に決定した夏の参院選基本方針で、支援する政党を明示せず、立憲民主、国民民主両党と「連携を図る」との表現にとどめた。

 芳野連合がスタートした直後の衆院選で、共産党と選挙協力した野党第1党の立民が敗北。一方で、官公労組に近い立民と民間労組寄りの国民の関係はぎくしゃくし、国会で共同歩調が取れない野党の影響力は一段と低下した。

 自民党が衆院で過半数を占める岸田政権は、賃上げによる「成長と分配の好循環」を掲げる。連合は、自らの主張を確実に実現するには、自民党との距離を縮めた方が得策と判断したかもしれない。やむを得ない面はあるが、参院選を控えた自民党にとって好都合なのは間違いない。

 自民党の今年の活動方針は党勢拡大に向け「連合との政策懇談を積極的に進める」と明記。麻生太郎副総裁らが芳野氏と会食するとともに、国民とは公明党を交えて政策協議を始めた。

 麻生氏は一連の働きかけで、連合が立民支持で一本化できていない状況を成果として強調している。自民党の狙いが、連合を仲介役にした参院選での野党共闘の阻止にあることは明らかだ。

 岸田首相が言う「政治の安定」とは、参院選で野党がさらに退潮し、自民党の思うように国会運営できる状況を指していると考えた方がいい。

 だが、自民党政務調査会の会合に招かれた芳野氏は「政策実現のため、一緒に取り組めればと思う。問題認識は自民党とほぼ一緒だった」と表明。連合のメーデー中央大会に岸田首相の代理として松野博一官房長官が出席したことには「大変光栄だ」と述べた。

 自民党の友好団体トップのようで、これでは労組票が立民と国民に割れるどころか、自民党に流れても仕方あるまい。

 民間と官公の労組による1989年の統一大会で採択した基本文書「連合の進路」は、「政権を担いうる新しい政治勢力の形成に協力し、政権交代を可能にする健全な議会制民主主義を実現する」と宣言。非自民党派による細川政権誕生や旧民主党の政権奪取の後ろ盾になった。

 今回の参院選基本方針は「働く仲間の暮らしと権利を守る政治家を一人でも多く国政の場に送り込むことが政治に緊張感をもたらす」とも訴えている。

 参院選で「1強」体制を盤石にした自民党が連合の期待に応え、非正規を含む労働者に寄り添った政策を推し進めるとは限らない。健全な議会制民主主義を実現し、政治に緊張感をもたらすためになすべきことは何か。連合の真価が問われている。