閉校となった小学校で開いた映画「ハッピーアワー」の上映イベント=2月、鳥取県湯梨浜町
閉校となった小学校で開いた映画「ハッピーアワー」の上映イベント=2月、鳥取県湯梨浜町
廃校舎を活用してミニシアターの開設を目指す柴田修兵さんと家族=鳥取県湯梨浜町
廃校舎を活用してミニシアターの開設を目指す柴田修兵さんと家族=鳥取県湯梨浜町
閉校となった小学校で開いた映画「ハッピーアワー」の上映イベント=2月、鳥取県湯梨浜町
廃校舎を活用してミニシアターの開設を目指す柴田修兵さんと家族=鳥取県湯梨浜町

 鳥取県湯梨浜町で、関西から移住してきた映画ファンの柴田修兵さん(39)が妻と共に、廃校舎を活用してミニシアターの開設を目指す。「テレビやスマートフォンで簡単に作品を視聴できる時代だからこそ、大きなスクリーンを前に集中して鑑賞する魅力を伝えたい」と、映画館が少ない同県で意気込む。廃校舎を活用してミニシアターの開設を目指す柴田修兵さんと家族=鳥取県湯梨浜町 柴田さんは高校生の時、昨年のベネチア国際映画祭で監督賞に輝いた黒沢清監督が撮った1990年代後半の代表作「CURE」と出合う。「世界の新しい見方を提示してくれた」と衝撃を受け、映画にのめり込むようになった。

 大阪市で音楽関係の仕事をする傍ら、友人と自主映画を製作。8年前、今年のベルリン国際映画祭コンペティション部門で新作が審査員大賞(銀熊賞)に選ばれた浜口竜介監督の即興演技ワークショップに参加した。

 長男が3年前に生まれ、自然豊かな地方への移住を決意。今年2月、鳥取県中部の湯梨浜町に移住し、閉校となった小学校で約3週間後に上映会を開いた。

 購入したプロジェクターや150インチのスクリーンを設置。自身が脇役で出演し妻もエキストラで参加した浜口監督の作品で、2015年のロカルノ国際映画祭で最優秀女優賞などを授与された「ハッピーアワー」を披露した。

 用意した約30席は満員御礼。来場者の50代男性は「感想を語り合える場ができるのはうれしい」と、ミニシアターを心待ちにする。

 「観客は、作品が始まれば映画館にいることを忘れ没頭する。施設はあくまで、鑑賞の道具」。機械工作で部品類や工具を固定する「治具(じぐ)」が、完成品に作業の痕跡を残さないことを連想した。開設する映画館の名称は「ジグシアター」に決めた。校舎の一室を借りる手続きを順調に終えれば、5月ごろから月1、2日の上映日を設けたいと考えている。

 鳥取県興行生活衛生同業組合によると、県内に映画館は今年2月時点で3館のみ。「ないのなら、自分でつくってしまえばいい」と思い立った。「若手監督の先鋭的な作品を中心に紹介し、多様な世界に出合える場にしたい」