第一章 発端の夏(七十一)

 泉原が立って、ザルに盛られた大玉の桃を居間に運んできた。湿った夜の大気に甘やかな桃の香りがパッと広がった。

 玄羽は団扇を置いてそのひとつを手に取ると...