ボールのスピンの効かせ方を指導する大野豊さん=出雲市大津町、出雲商業高校
ボールのスピンの効かせ方を指導する大野豊さん=出雲市大津町、出雲商業高校

 プロ野球広島東洋カープで投手として活躍した大野豊さん(66)=出雲市出身=が4月から月1回、母校の出雲商業高校(出雲市大津町)野球部を指導している。母校と野球への恩返しを胸に、部員、指導陣に技術と精神面で自身の経験を伝授する。大先輩の支えに部員たちは33年ぶりの夏の甲子園出場に向け、やる気をみなぎらせている。

 「今のボールを続けてみよう。投げられるんだから」。今月19日、同校のブルペンで投球練習する投手陣に、大野さんの声が響いた。ボールのかかり具合や下半身の使い方など部員から次々と寄せられる質問に丁寧に答える。ブルペンで歴戦の左腕を披露すると、年齢から想像できない球筋に部員たちは「えぐい」と目を輝かせた。

 同校から出雲市信用組合(現島根中央信用金庫)を経て1977年に広島に入団。現役22年間で148勝、138セーブを挙げ、2013年に野球殿堂入りしたレジェンドの指導は、水津則義校長の依頼がきっかけだった。

 昨年、プロ経験者が高校、大学で指導できる「学生野球資格回復制度」の認定を受け、広島商業高校など広島県内の野球部を指導。「母校を差し置いてと、ずっと気にしていた」という中で舞い込んだ依頼に快諾した。「出雲商があって、野球があって今がある。自分の影響で選手に良いヒントが与えられたら」と、テレビ解説とのスケジュール調整をしながら自宅のある広島市内から母校に訪れる。

 指導は投手陣が主で「追求の大切さ」を大事にする。納得いかないボールは何が原因か、良いボールは何が良かったのかを常に考えさせる。その積み重ねが、自身で修正できる力を培うからだ。

 「現役時代、そこまで追求できていなくて、良いときは三振を取れるが、一つ間違ったら自滅するタイプだった」と自身の経験も踏まえる。投手はネガティブになりやすいからこそ自分を知り、自信を持って投げられるように教える。

 3年生エースの西村一機さん(18)は、チェンジアップを投げるこつや攻めの気持ちの大切さを学んだ。「気持ちが前向きになるとボールが良くなる。自信が持てた」と感謝する。松本篤士監督(28)はコミュニケーションを通じて選手の内面を知ることの大切さを教わり「チームが前向きになり、いい方向に向かっている」と手応えを感じる。

 チームの目標は2度目の夏の甲子園出場。練習後、県大会前最後の指導となった大野さんが「相手じゃないぞ。まず自分自身に負けないことだ」と激励すると、グランドに選手の力強い返事がこだました。
      (松本直也)