殺菌効果があり、新型コロナウイルスにも効くとされる「222nm(ナノメートル)紫外線」が、現在の国際基準より大量に目に浴びても安全だとする研究成果が発表された。島根大医学部(出雲市塩冶町)と照射機器メーカーが共同研究した。米国の専門機関による国際基準引き上げ検討にも影響を与えたとみられる。より強く長時間の照射に道が開かれ、コロナ退治に一層役立ちそうだ。

 222nmは特に波長が短い紫外線。人間の目や皮膚の深層にまで浸透せず、人体に害が起きにくい。一方、人体の細胞より小さいコロナウイルスに対しては核に届き、死なせる効果があるとされる。このため、同大医学部付属病院など医療機関で室内に照射し、殺菌に使う例は珍しくない。

 人間に安全に照射できるエネルギー量の国際基準は8時間に1平方センチ当たり22ミリジュール。基準は、50年前にサルなどで行った研究結果を基に定められており、同大医学部眼科学講座のグループと照射機器メーカー・ウシオ電機(東京都)が改めて検証しようと2018年に研究を始めていた。

 研究はラットの目に222nm紫外線を、エネルギー量を変えて照射し、角膜表面に障害を与える限界値を調べた。結果、限界値は3500~5千ミリジュールで、基準の根拠の一つになったサルでの研究(20ミリジュール)の100倍以上だと突き止めた。

 国際基準をより高く設定できる可能性を示す成果で、研究論文が3月22日付の米国の光化学、光生物学の雑誌に掲載された。

 この研究のほか、神戸大が皮膚への安全性を確認したことなどから、米国産業衛生専門官会議が安全性基準を150~160ミリジュールに引き上げる検討を始めた。同会議は国際基準見直しに影響力が大きく、引き上げが決まれば、日本産業規格にも引用される見通し。

 基準引き上げで、より長時間、あるいは強い照射が可能になれば、コロナ退治の威力も高まるという。研究を担当した眼科学講座の海津幸子助教は「コロナの変異株にも有効で、照射は感染防止の一つのツールになる」と期待した。

      (松本直也)